バツイチだけど恋をしてもいいですか

「前に、言ってただろ」
「そっかぁ」

 ふたりのやりとりに頬を緩めながら、私もケチャップを手に取る。

「じゃあ、ママは花音のオムライスにケチャップかけてあげるね」
「イルカさんかいて!」
「いいよ」

 ケチャップでイルカの形を描きながら、神崎課長に説明する。

「うちではいつもこうやって、相手のオムライスにケチャップをかけてあげるんです」
「ママのオムライスは、かんざきさんね」

 花音にケチャップのボトルを手渡された課長は、一瞬にして困惑した表情になった。

「……なにを書けばいいんだ」

 職場ではどんな時も的確な判断を下す冷静な課長が、困り果てた様子でオムライスを見下ろす。そのギャップがおかしくて、くすくすと肩を揺らしてしまう。

「なんでもいいですよ。普通にかけるだけでも」
「ママはいつも、ハートとか『だいすき』とかかいてくれるよ」
「……そうか」

 課長は真剣な顔でしばらく考え込んだあと、慎重にケチャップを絞り始めた。そして完成したオムライスを見た私は、たまらず噴き出した。

「オムライスに『オムライス』って書く人、初めて見ました」