「でも、私は離婚したばかりですし、花音を育てることで手がいっぱいで……」
言い訳のようにそう言うと、課長は「わかっている」とうなずいた。
「好きだと伝えたのは、自分の気持ちを隠したまま君たち母娘に関わるのは、フェアじゃないと思ったからだ」
真面目で公正な課長らしい、まっすぐな言葉だった。
「この気持ちに応えてほしいわけでも、今すぐ返事がほしいわけでもない」
気遣うようにそう言われ、自然と肩から力が抜ける。
ほっと息を吐き出した途端、課長の表情が変わった。
「――だが、これからは上司としてだけではなく、素の俺も知ってもらいたい。そのための努力をしていいか?」
「努力……ですか?」
「あぁ。好きな女を振り向かせるための」
そう言って、まっすぐな視線を、私へと向ける。
仕事中の冷静な彼とは別人のような、熱をはらんだ視線から、男性としての色気を感じて、鼓動がどんどん速くなる。
だめだ。心臓が爆発する……!
そう思い、私は慌てて違う話題を口にした。
「そ、そうだ、一昨日のお詫びをしたいんですけど……」



