バツイチだけど恋をしてもいいですか


10自覚した恋心 神崎side


 水族館を出る頃には、日は西に傾いていた。オレンジ色の夕日に照らされ、足元には長い影が落ちる。

 一日はしゃぎ回った花音ちゃんは、中里に手を引かれながら、船を漕ぐように首をゆらゆらと揺らしていた。反対の手には、イルカのぬいぐるみ。

 そのぬいぐるみは、お土産コーナーで俺が買った物だった。遠慮する中里に、『思い出だから、買わせてほしい』と少し強引にお願いした。

 今日のことを、忘れてほしくなかったから。

 くたくたで今にも寝てしまいそうなのに、小さな手でしっかりとぬいぐるみを持つ花音ちゃんを見ると、胸のあたりが締め付けられた。

「花音、眠たい?」
「んー……」

 返事をする余裕もない花音ちゃんを見て、中里は小さく笑ってしゃがみ込む。抱っこしようとした中里を「俺が抱く」と制して腕を伸ばした。

「え、でも……」

 完全に電池が切れ脱力した花音ちゃんを、両手で抱き上げる。

「……すみません」

 申し訳なさそうに謝る中里に、首を横に振った。