バツイチだけど恋をしてもいいですか

「前に課長が、お弁当を作ってもらった記憶がないって言っていたので――」

 肩に下げたトートバッグの取っ手を、握りしめながらそう言う。

 水族館につき合ってもらうお礼になればと思って作ったけれど、冷静に考えてみれば課長が手作りのお弁当をよろこぶはずがないし、迷惑がられるに決まってる。

「頼まれてもいないのに、余計なことをしてすみません。みんなでフードコートで食べたほうがおいしいし楽しいので、お弁当は気にしないでください」

 明るい声でそう言うと、課長が真顔で私を見た。

「中里が作った弁当がいい」
「え、でも」
「俺のために作ってくれたんだろう?」
「それは、そうですけど……」
「絶対に食べたい」

 意地でも譲らないという意思のこもった視線を向けられ、私は思わず目を瞬かせる。

「かのんも、ママのおべんとうがいいっ」

 花音も神崎課長に同意する。

 そんなやりとりを見ていた蓮くんのお母さんと中村さんは、くすくすと肩を揺らして笑った。

「じゃあ、ここで解散してお昼は別々に食べましょうか」
「そうだな。蓮、行くぞ」