バツイチだけど恋をしてもいいですか

 興奮しながら声をかけると、彼は「ん?」と私の指先をたどるように顔を近づけた。

「あのエイ! おじいさんに似てません?」

 ゆったりとした笑みを浮かべながら、気持ちよさそうに泳いでいくエイは、いつも『いらっしゃい』と出迎えてくれるおじいさんそっくりだった。

「ほら、あのマイペースで飄々とした感じが――」

 そう言いながら横を見て、はっとした。長身を屈めた課長の顔が、すぐそばにあることに気付く。

 しかも私は興奮のあまり、課長の服を掴んでいた。

「す、すみません……。年甲斐もなくはしゃいでしまって……っ」

 慌てて手を離し、頭を下げて謝る。

 馴れ馴れしい態度を取ってしまった。不快に思われたかもしれない。そう思った瞬間、課長の整った顔がふっと崩れた。

「本当だ。確かに似てる」

 目もとを緩め、ふわりと笑う。

 仕事中には決して見せない、柔らかい表情だった。

「……っ」

 心臓が大きく跳ねる。なにか言わなきゃと思うのに、言葉が出てこない。胸のあたりが落ち着かなくて、どうしていいのかわからなくなる。

 その時、背後から元気な声が聞こえた。