バツイチだけど恋をしてもいいですか


9水族館へのドライブ 愛美side


 約束の日の朝。私は何度も鏡の前に立っては、服を整えたり髪を直したりと、そわそわした気持ちでいた。

 そんな私とは対照的に、花音は「すいぞくかんっ! ドライブっ!」と、待ちきれない様子ではしゃいでいる。

 スマホが震え画面を見ると、神崎課長からの着信。

「はいっ」

 慌てて電話に出ると、『着いたぞ』と落ち着いた声が聞こえた。

「す、すぐ行きますっ!」
『慌てなくても、ちゃんと待ってる』

 私の勢いに、課長が苦笑交じりにそう言う。電話越しに聞く低い声に、さらに落ち着かなくなる。

「花音、行こうか」
「うん!」

 荷物を持ってアパートの外に出ると、そこには黒いSUVが停まっていた。

 運転席のドアが開き、神崎課長が下りてくる。

「あ! かんざきさんだー!」

 花音はうれしそうに駆け寄っていく。課長は長身を屈め、「おはよう」と言いながら花音の頭をぽんぽんとなでた。

 そして、立ち上がり視線をこちらに向ける。

 私服姿の神崎課長を見るのは、これが初めてだ。