バツイチだけど恋をしてもいいですか

「そうそう。お客さんから水族館のチケットをもらったんだけど、いるかい?」

 その言葉に、花音ちゃんが目を輝かせた。

「すいぞくかんっ!」
「え。いいんですか?」
「もちろん。私が持っていても無駄になるだけだからね」
「ありがとうございます。ちょうど水族館に行きたいねって花音と話をしていたんです」
「それはよかった。あぁでも、花音ちゃんとふたりで電車じゃ、少し遠いかもしれないね」

 祖父はそう言いながら、視線を俺のほうに向ける。

「そうだ、亘一。車を出してあげなさい」

 唐突な提案に、中里は「えっ」と戸惑いの声を上げ、俺は思わず咳き込みそうになる。

「な、なにを言ってるんだ」

 花音ちゃんが楽しみにしている水族館なのに、俺が付いていったら台無しにしてしまう。そう思い顔をしかめたけれど、祖父は平然としていた。

「せっかく車があるんだから、たまには走らせないともったいないだろ」
「しかし――」

 俺が言葉に詰まると、祖父は中里に視線を向けてにっこりと笑う。

「あぁ、すまない。余計なことを言ってしまったね。休みの日までこんな堅物の顔なんて見たくないか」