バツイチだけど恋をしてもいいですか

 祖父がそう言いかけた瞬間、俺は慌てて首を横に振った。視線と表情で、頼むからなにも言わないでくれと必死に伝える。

 動揺する俺を見て事情を察したのか、祖父は穏やかに笑って口を開いた。

「亘一が読むわけないよ。あいつは他人のことに興味がないからねぇ」

 祖父の言葉を聞いて、中里はほっとしたように胸をなでおろす。

「そうですよね」

 その後ろで俺も息を吐き出した。

 あぶなかった……。そう思っていると、気配に気付いたのか花音ちゃんがこちらを見た。

「あ。ママのかいしゃの、おにの……」

 鬼の人、と言いかけた花音ちゃんの言葉を、中里が慌てた様子で遮る。

「か、花音。この人は、神崎課長だよ」
「かんざきかちょう……」

 拙い口調で繰り返した花音ちゃんに「神崎でいい」と短く言う。

「かんざきさん?」

 こてんと首をかしげながら見上げられた。

 中里によく似た大きな瞳に、サラサラの髪。無邪気な反応や素直な表情が愛らしいと思った。中里がなにを犠牲にしても、この子の幸せを守りたいと思うのも当然だ。

 そんなやりとりを見ていた祖父が、思い出したように口を開く。