バツイチだけど恋をしてもいいですか

「……参ったな」

 誰にも聞こえないほど小さな声でそうつぶやく。

 きょとんとした表情でこちらを見上げる中里に、胸のあたりが落ち着かなくなった。




 その日、仕事を終えた俺は、祖父のスーパーへと向かった。

 自動ドアをくぐると、聞き慣れた声が耳に届く。

 掲示板の前で祖父と話しているのは、中里と娘の花音ちゃんだった。

「この前は、お騒がせしてしまってすみません」
「いやいや。亘一の部下だったんだってね」
「はい。神崎課長には、いつもお世話になっていて」

 そんな話をしながら、祖父がこちらに気付き小さく笑う。中里は入り口に背を向けていて、俺がいることには気付いていないようだ。

 盗み聞きもなんだし声をかけるか……と思っていると、中里が「あの、変なことを聞くんですけど」と祖父に切り出した。

「なんだい?」
「この掲示板に寄せられた相談を、神崎課長が読むことってありますか……?」

 中里の問いかけに、祖父は「あぁ」とうなずく。

「読むもなにも、亘一が――」