バツイチだけど恋をしてもいいですか

 見下ろすと、俺に抱きしめられた中里がこちらを見上げたまま固まっていた。

 中里は、頬はもちろん目もとも耳も、首筋まで真っ赤にしていた。服越しに触れる体から、湯気が出そうなほど熱い体温と速い鼓動が伝わってくる。

「わ、悪い」

 慌てて謝りながら、背中に回した腕をほどき、密着していた体を離す。

 腕に残った華奢な体の感触に、気まずくて彼女を直視できなかった。

「きゅ、急にどうしたんですか……?」

 戸惑う中里の問いかけに、平静を装いながら答える。

「前にふたりでいるところを見られなくないと言っていただろう。だから、咄嗟に」

 そう説明すると、中里は呼吸を整えてから「なるほど」とうなずいた。

「課長は私たちの仲を勘繰る人なんていないって言ってたのに、わざわざ気を使ってくれたんですね。ありがとうございます」

 彼女からお礼を言われ、俺は言葉を返せなくなる。

 確かに、俺たちの仲を勘繰る人なんていないと自分で言ったはずなのに……。

 それなのに咄嗟に隠れてしまったのは、自分の中に以前はなかった感情があるからだ。

 そのことに気付き、動揺が大きくなった。