女性が言った法務部という言葉に、思わず手を止める。
「まじか。せっかく噂を流して孤立させたのに」
「会社に居づらくさせればすぐに辞めると思ったのに、図太いですよね」
ふたりが話しているのは、もしかして……。
俺が顔をしかめると、ドアの向こうの男が「本当だよ」と大袈裟なため息をついた。
「あいつに同じ職場で働き続けられたら、いつ娘のことがバレるかわかんねぇし、面倒なんだよなぁ」
「だったらもっと悪い噂を流しましょうよ。いつも後輩をいびってたとか、結婚していた頃から不倫してたとか――」
「お、いいじゃんそれ」
俺が聞いているとも知らず、ふたりはそんな会話をしながら去っていく。靴音が聞こえなくなり、辺りは静かになった。
ゆっくりと息を吐き出す。胸の奥に込み上げる怒りをなんとか落ち着かせようとしていると、目の前のドアが開き視界が急に明るくなった。
正面に現れた中里が、ドアノブを握ったまま「え……っ?」と驚いたように声をもらした。
すぐそこに俺が立っているとは思わなかったんだろう。資料室に入ろうとした中里と衝突しそうになる。
「まじか。せっかく噂を流して孤立させたのに」
「会社に居づらくさせればすぐに辞めると思ったのに、図太いですよね」
ふたりが話しているのは、もしかして……。
俺が顔をしかめると、ドアの向こうの男が「本当だよ」と大袈裟なため息をついた。
「あいつに同じ職場で働き続けられたら、いつ娘のことがバレるかわかんねぇし、面倒なんだよなぁ」
「だったらもっと悪い噂を流しましょうよ。いつも後輩をいびってたとか、結婚していた頃から不倫してたとか――」
「お、いいじゃんそれ」
俺が聞いているとも知らず、ふたりはそんな会話をしながら去っていく。靴音が聞こえなくなり、辺りは静かになった。
ゆっくりと息を吐き出す。胸の奥に込み上げる怒りをなんとか落ち着かせようとしていると、目の前のドアが開き視界が急に明るくなった。
正面に現れた中里が、ドアノブを握ったまま「え……っ?」と驚いたように声をもらした。
すぐそこに俺が立っているとは思わなかったんだろう。資料室に入ろうとした中里と衝突しそうになる。



