8待ち遠しい週末 神崎side
デスクでパソコンに向かいながら、新商品のプレスリリースの内容をチェックする。問題がないことを確認して視線を上げると、渡辺が中里に話しかけているのが見えた。
「中里さんが作ってくれたチェックシートのお陰で、レビュー依頼の差し戻しが減ってありがたいわ」
「本当ですか? よかったです」
渡辺の言葉に、中里が自然な笑みを浮かべる。少し前までなら考えられない、和やかなやりとりだった。
中里が法務部に異動してきた当初、女性社員たちは社内でささやかれる悪い噂を耳にして疑心感を抱いていたんだろう。
中里自身もそのことを察して、波風を立てないように周囲から距離を取っていた。
けれど中里が周囲とコミュニケーションを取るようになったことで、フロアの空気が変化した。
真面目な彼女の仕事ぶりが認められ、気付けば中里は法務部の社員たちに溶け込んでいた。
中里を取り巻く状況が改善したことはよろこぶべきだが、上司としてなにもしてやれなかった自分に情けなさが込み上げる。
そんなことを考えていると、ふと中里が顔を上げこちらを見た。



