ルシアナは夢を見た。
学園の廊下を1人で歩く、ふと振り返ると手を振るカイゼルがいた。そのまま2人で歩く。
図書館でエリィと隣に並んで座り、ノートを開いている。時折エリィがルシアナに小声で何かを言い、2人で笑い合っている。楽しそうだ。
カイゼルの隣で食事をしている。ルシアナの嫌いな茸を食べてくれている。それを見て微笑うエリィ。
カイゼルがもっと小さくなった。子供の頃だろう。自ら摘んだであろうたくさんの野花を抱え、満面の笑みでルシアナに差し出した。
街で、一輪の薔薇をカイゼルから受け取った。子供の頃のように満面の笑みではないが、熱の籠もった、心臓が煩くなるような瞳でルシアナを見つめている。
(ああ、私、カイゼルに疎まれても、嫌われてもいないのね····)
重い瞼を開けると、天井が移った。
(どれだけ寝てたのかしら)
身体が重い。間違いなく寝過ごしている。窓から夕日が差し込んでいた。
ふと横を見ると、目に涙を浮かべたカイゼルが座っていた。
「あら?これも夢?カイゼルは泣き虫ね」
そうだ。昔のカイゼルは泣き虫だった。まだ5歳、婚約したての頃だ。「ここは知らない世界だ」とか自分の家にいるのに「帰りたい」とか泣き出すことが多々あった。
カイゼルはグイッと腕で涙を拭い、食いしばりながら言った。
「君が3日間も眠り続けるからじゃないか···!」
「み···ゴホッゴホ」
喉がカラカラだ。3日間?
カイゼルはメイドが用意していた水をグイッと飲み、ルシアナに噛み付くように口付けた。
「んぅっ?」
あまりの事に、喉が潤ったにも関わらずまた咳込んでしまった。
「なっ、何を、何をするのです」
「うるさい」
八つ当たりのような口づけに、ルシアナは憤慨する。
(ひどい。セクハラなんてものじゃないわ)
「カ、カイゼル様は、カイゼル様は、私が好きなのですか?」
口籠りながらも、言い切った。回りくどく聞く余裕もなければスキルもない。
カイゼルは今まで涙目だったのが嘘のように、にやりと微笑った。
「今さらだな?」
熱の籠もった金色の瞳に、顔が赤くなるのを感じる。



