溺愛王子と秘密の同居

「別に」

「え」

「夢咲がまた変なのに巻きこまれて倒れたら面倒だから」

「朔夜……」

「それ心配してるってことじゃない?」

 悠真がやわらかく言うと、朔夜は面倒そうに視線をそらす。

「ちがう」

「ふふ、ほんとかな」

 そのやりとりに少しだけ空気がゆるんで、わたしはほっと息をついた。

 ……のも束の間だった。

「じゃあ決まりね」

「え?」

 るいがにっこり笑う。

「りんくんの右隣は玲央くん、左隣は朔夜くん。向かいは悠真くん」

「るいは?」

「俺はここ」

 そう言って、るいはわたしの斜め前の席に座った。
 身を乗り出せばすぐ近い距離だ。

「近っ」

「これならちゃんと見えるし」

「何が!?」

「りんくんの顔」

 即答されてしまって、また一気に熱くなる。

「もう……落ち着いて朝ごはん食べたいだけなのに……」

 わたしが小さくこぼすと、玲央が隣でふっと笑った。

「無理だろ」

「なんでそんな断言するの」

「おまえがいるから」

「意味わかんない!」

 でも、玲央の横顔はどこか楽しそうだった。

 結局、わたしはみんなに囲まれる形で席につくことになった。
 朝ごはんを食べ始めても、視線はあちこちから飛んでくる。

「りんくん、それ取ってあげる」

「ありがとう……」

「夢咲くん、牛乳こぼさないでね」

「子どもじゃないよ!?」

「でも危なっかしい」

「朔夜まで……!」

「パン、ちっちゃくちぎったほうが食べやすいよ」

「悠真、甘やかしすぎ」

「玲央くんには言われたくないな」

 わたしを中心に会話が回っていく。
 やさしい言葉ばっかりなのに、なんでこんなに心臓が忙しいんだろう。

 ふと前を見ると、るいがじっとこっちを見ていた。

「……るい?」

「ううん」

 るいはにこっと笑ったあと、少しだけ寂しそうにまつげを伏せる。

「やっぱり玲央くんの隣、うらやましいなって思っただけ」

「っ……」

 その一言に、玲央の空気がぴりっと変わる。
 でも今度は、玲央より先に悠真が口を開いた。