溺愛王子と秘密の同居

長テーブルの上には、もう朝食がいくつか並んでいる。
 おいしそうな匂いに少しだけ気持ちがゆるんだ、そのとき。

「りん、こっち」

 玲央が椅子を引いた。

「えっ」

 しかも、玲央の隣。
 あまりにも自然な動きで用意されていて、わたしは目をぱちぱちさせる。

「座れよ」

「で、でも……」

「でも?」

 返事に詰まった瞬間。

「だーめ」

 るいがすっと前に出て、にこっと笑った。

「そこ、俺が座りたい」

「は?」

「りんくんの隣」

 そのひとことで、朝の食堂の空気がぴたりと止まった気がした。

「るい、おまえ……」

「だって昨日のぶん、まだ全然足りないし」

 るいはそう言って、わたしの手をそっと取る。

「ね、りんくん。今日は俺の隣がいいよね?」

「えっ、ええっ!?」

 急に振らないでほしい。
 そんなの答えられるわけない。

「ほら、困ってる」

 悠真が静かに口をはさむ。

「朝から選ばせるのはかわいそうでしょ」

「悠真くんは優しいね」

「優しいっていうか、普通だよ」

 そう言いながら、悠真はわたしの前の席を軽く引いた。

「りんくんはここでもいいよ。向かいならみんなと話しやすいし」

「っ」

 それはそれで助かる案かもしれない。
 そう思った瞬間。

「それも却下」

 玲央が即座に言った。

「なんで!?」

「向かいは近いだろ」

「隣も十分近いよね?」

 るいがすかさず返す。
 朔夜は少し離れたところからそのやりとりを見て、呆れたように息をついた。

「朝からうるさい」

「朔夜くんは誰の隣でもいいの?」

 るいがからかうみたいに聞く。

 すると朔夜は、少しだけ目を細めてから空いていた席に座った。
 ……わたしの反対側の隣に。