溺愛王子と秘密の同居

「むり……朝からむり……」

 鏡を見ると、顔が見事なくらい真っ赤だった。

 急いで制服に着替えて、髪を整えて、深呼吸して。
 それでも全然落ち着かないまま扉を開けると、玲央がすぐに顔を上げた。

「おそい」

「急いだよ!」

「ふーん」

 玲央はそう言いながら、じっとわたしを見る。
 その視線がまっすぐすぎて、またそわそわしてしまう。

「な、なに……」

「ちゃんとしてる」

「え?」

「昨日よりまし」

「それ褒めてる?」

「一応」

 むっとしながらも、少しだけうれしいと思ってしまう自分がくやしい。

 玲央はくるっと背を向けて歩き出した。

「ほら、行くぞ」

「待って……!」

 そのあとを追いかけるみたいに並ぶと、朝の廊下に二人分の足音が響く。
 まだ静かな寮の中で、それだけがやけに特別に思えた。

「……ほんとに来たんだね」

「だから言っただろ」

「でも、毎朝こんな感じなの?」

「嫌ならやめる」

 ぴたり、と玲央が足を止める。

 その横顔が思ったより真剣で、わたしは思わず目を見開いた。

「や、嫌じゃない!」

「……ならいい」

 すぐに歩き出した玲央の耳が、ほんの少しだけ赤く見えた気がした。

 そのことに気づいた瞬間、胸の奥がきゅっと甘くなる。

 昨日までとは違う朝。
 昨日までとは違う距離。

 こんなふうに一日の始まりを誰かと一緒に迎えるなんて、少し前のわたしは想像もしていなかった。