溺愛王子と秘密の同居

「わ、わたし……」

 あわてて口を開いた、そのとき。

 ぐうううう……。

「…………」

 お腹の音が、やけに大きく部屋に響いた。

 数秒の沈黙のあと。

「っ、あはは!」

 最初に吹き出したのはるいだった。
 次に悠真が困ったように笑って、朔夜までほんの少しだけ口元をゆるめる。

「夢咲、最高」

「ち、違っ……!」

「違わないでしょ」

 朔夜に淡々とつっこまれて、わたしは真っ赤になる。

 もう消えたい。
 穴があったら入りたい。

 でも玲央だけは、なぜか少し安心したみたいな顔をしていた。

「……ほらな」

「え?」

「疲れてる上に腹減ってんだよ」

 そう言って玲央は、わたしの背中を軽く押した。

「先に飯」

「りんくん、何食べたい?」

 るいがすぐに寄ってくる。

「消化にいいものがいいかもね」

 悠真がやさしく言う。

「温かいスープならあるけど」

 朔夜が短く続ける。

「え……」

 さっきまであんなにぴりぴりしてたのに、今はみんなの優しさが一気に向いてきて、逆に戸惑ってしまう。

「なに、その顔」

 朔夜がわたしを見る。

「いや……みんな、急にやさしいなって」

「急にじゃないよ」

 悠真がふっと笑う。

「ずっと気にしてる」

「そうそう。りんくんが可愛いから」

 るいがさらっと言ってくる。

「っ……」

「調子乗るな」

 玲央がすぐにるいをにらむ。

 また始まりそうな空気に、わたしはあわてて口を開いた。

「ご、ごはんにしよう!」

 その言葉に、一瞬みんながきょとんとしたあと、また小さく笑いがこぼれた。

 こうしてわたしの初日は、最後の最後まで心臓が休まる暇もないまま、にぎやかに更けていくのだった。