溺愛王子と秘密の同居

「本人、完全についていけてない」

「っ……」

 その通りすぎて何も言えない。
 るいが小さく笑った。

「たしかに」

「笑いごとじゃない」

 朔夜はそう言って、まっすぐわたしを見る。

「夢咲、困ってるなら困ってるって言えば」

「え……」

「顔に全部出てる」

 またそれ。
 今日はほんとに何回言われるんだろう。
 恥ずかしくてたまらないのに、朔夜の言葉は妙にまっすぐ胸に入ってくる。

「おまえ、無理して合わせるタイプだろ」

「……そんなこと」

「ある」

 即答されて、言葉が止まる。

 朔夜は無表情のまま近づいてくると、わたしの前で足を止めた。
 そして、ほんの少しだけ顔をのぞきこむ。

「今日、朝より疲れてる」

「う……」

 見抜かれてる。
 悠真とは違う意味で、逃げられない感じがする。

「だから、少し休ませたら」

 朔夜のその一言に、悠真が静かにうなずく。

「そうだね。まずはりんくんの気持ち優先にしよう」

「俺は最初からそう言ってるけど?」

 るいが唇をとがらせる。

「お菓子でつるのが?」

 玲央が冷たく返す。

「玲央くんよりはやさしいと思う」

「は?」

「はいはい、そこまで」

 悠真が間に入るように一歩前へ出た。

 その動きがあまりにも自然で、一瞬だけ空気がやわらぐ。
 さすが悠真。
 ほんとに助かる……と思ったのに。

「じゃあ、りんくん本人に聞こうか」

「えっ」

 全員の視線が、一斉にこっちに集まった。

「きょ、今日の……その……夕方は」

 声がうわずる。
 無理。
 こんなの答えられるわけない。

「誰と過ごしたい?」

 悠真の問いがやさしいぶん、余計に逃げ場がない。

「えっと……その……」

 るいが期待するように見つめてくる。
 悠真は穏やかに微笑んでいる。
 朔夜は静かにこちらを見ていて、玲央は何も言わないまま目を細めていた。

 しん、と部屋が静かになる。

 どうしよう。
 誰かを選ぶみたいになるのは嫌だ。
 でも黙ってたら、もっと変な空気になる。