溺愛王子と秘密の同居

「……あのさ」

「ん?」

「今日のこと、ありがとう」

「何が」

「いっぱいありすぎて全部だけど……助けてくれて」

 正直に言うと、玲央は少しだけ驚いた顔をした。
 でもすぐに、前を向いたまま短く言う。

「礼なんかいらねえよ」

「でも」

「言っただろ。放っておけないって」

 そのひとことが、夕方の空気の中でやけにまっすぐ胸に落ちる。

「……うん」

 わたしが小さくうなずくと、玲央はふいに立ち止まった。

「玲央?」

「顔」

「え?」

「髪、ついてる」

 そう言って、玲央の指先がわたしの頬のすぐそばに伸びる。
 触れるか触れないかの距離で髪を払われて、心臓がまた大きく跳ねた。

「……っ」

「固まるなよ」

「む、無理……」

「なんで」

「なんでも!」

 あわてて一歩下がると、玲央は少しだけ困ったように笑う。

「おまえ、ほんとわかりやすいな」

「玲央のせいでしょ……」

「俺のせい?」

「だって、近いし」

 小さくこぼした言葉に、玲央がふっと黙る。
 そのあと、ほんの少しだけ低い声で言った。