溺愛王子と秘密の同居

しばらく無言のまま歩いていたけど、その沈黙は嫌じゃなかった。
 むしろ、今日一日の中でいちばん落ち着く時間かもしれない。

「……疲れたか」

 ぽつりと玲央が言う。

「うん。すごく」

「だろうな」

「でも、なんとか初日は終わった」

 そう言って笑ってみせると、玲央は少しだけ目を細めた。

「無理して笑うな」

「え」

「しんどいときはしんどいって言え」

 その声が思ったよりやさしくて、胸の奥がじんとした。

「……玲央って、ほんとはけっこう優しいよね」

「ほんとはって何だよ」

「だって最初、もっと怖い人かと思ってたし」

「失礼」

 そう言いながらも、玲央の口元は少しゆるんでいる。

 わたしはそんな横顔を見て、昼のことを思い出した。
 るいに振り回されて、玲央に真剣な顔で引き寄せられて。
 思い出すだけでまた落ち着かなくなる。