溺愛王子と秘密の同居

その日の放課後。
 一日が終わるころには、わたしの心はすっかり疲れきっていた。

 初日なのに目立ちすぎたし、るいのことも玲央のことも気になって、授業の内容なんてほとんど頭に入っていない。

「はあ……」

 教室を出て小さく息をつく。
 夕方の廊下は朝より静かで、そのぶん一日の出来事がじわじわ思い出されてしまう。

「ため息多すぎ」

「ひゃっ」

 びくっとして振り向くと、そこには玲央がいた。

「れ、玲央……」

「またその反応」

「だって急に後ろから声かけるから……」

 むっとして言うと、玲央は少しだけ笑った。

「帰るぞ」

「え?」

「寮まで」

 その言い方があまりにも当たり前で、わたしは目をぱちぱちさせた。

「みんなは?」

「先に帰した」

「なんで」

「おまえが今日ずっと顔赤いから」

「っ……!」

 思わず頬を押さえると、玲央は呆れたみたいに肩をすくめる。

「自覚あったんだな」

「あるよ……!」

「ならもう少し隠せ」

「無茶言わないでよ……」

 玲央はそれ以上からかわず、わたしの歩幅に合わせて隣を歩き出した。
 校舎を出ると、夕焼けがあたりをやわらかく染めていて、昼間の騒がしさがうそのみたいに感じる。