溺愛王子サマ達と秘密の同居

「すず、時間だぞ」

 お父さんに呼ばれて、わたしは小さくうなずいた。

「……行ってきます」

 口にした瞬間、急に足がすくみそうになる。
 でも、ここで逃げたらお兄ちゃんが困る。
 わたしはぎゅっと鞄の持ち手を握りしめて、家を出た。

 電車に揺られて、知らない景色をいくつも過ぎて。
 ようやくたどり着いた学園は、思わず立ち止まるくらい大きかった。

「うわ……」

 高い門。
 手入れの行き届いた並木道。
 映画の中みたいにきれいな校舎。

 ほんとにこんなところで、一か月も生活するの?

「無理かも……」

 小さくつぶやいた、そのときだった。

「おい」

「ひゃっ!?」

 いきなり背後から声をかけられて、びくっと肩が跳ねる。
 振り向いた先にいたのは、信じられないくらい目立つ男の子だった。

 背が高くて、足が長くて、制服の着こなしまでずるいくらいさまになってる。
 少し鋭い目元なのに、顔立ちは整いすぎていて、近くで見ると息をのむほどきれいだった。