溺愛王子サマ達と秘密の同居

 ……え、今、笑った?

 でも次の瞬間にはもういつもの無愛想な顔に戻っていて、気のせいみたいに本を抱え直す。

「夕食、七時」

 それだけ言うと、朔夜はさっさと行ってしまった。

「朔夜なりに心配してるんだよ」

 悠真が教えてくれる。

「そうなの?」

「そうそう。あれで案外やさしいんだよ」

 るいが笑いながら言う。
 たしかに、さっきのひとことはちょっとだけやさしかったかもしれない。

 でも、問題はそこじゃない。

 部屋に残った玲央が、まだ帰ろうとしないのだ。

「……あの」

「なに」

「いつまでいるの?」

「おまえがちゃんと落ち着くまで」

「なんでそうなるの!?」

「さっきから顔に全部出てる。今にも逃げ出しそう」

「っ……」

 図星すぎて言い返せない。
 だってほんとに、まだ実感がなくて、夢みたいで、でも逃げたいくらい緊張してる。

 そんなわたしを見て、玲央は少しだけ目を細めた。

「言っとくけど」

「……なに」

「ここじゃ、ぼーっとしてるとすぐ食われるぞ」

「は!?」

 なにそれ、意味わかんない!

 顔を真っ赤にしたわたしに、玲央はくすっと笑った。

「そういう顔すんなよ」

「だ、だれのせいだと思ってるの!」

「おもしろいな、おまえ」

 またそれ。
 ほんとにこの人、ずるい。
 いちいちからかってくるくせに、ときどきやさしそうな顔するの、反則だと思う。

 玲央は扉の前でくるっと振り返ると、最後にひとことだけ残した。

「七時。遅れんなよ、りん」

 そのまま出ていった背中を見送りながら、わたしはその場にへなへなとしゃがみこんだ。