Forward into shadow

面倒ごとは避けて通りたいのが人間。

本能にしたがったまでだ。


地面の様子も綺麗なアスファルトになって、足音も小さくなった時。

今まで俯いていた顔を上げる。

景色は変わっていて、今度は綺麗な街並み。


地面には何一つゴミは落ちていないし、街灯も明るく灯っている。


デパートの前にはイルミネーションがキラキラと輝いていて、手を繋いで静かに眺めるカップルもいる。

幸せそうな光景が広がっていた。


さらに進んで行くと、大きくも小さくもない、平凡なマンションが見えてくる。

そこが私の家だ。


カツ、カツ、と足音を鳴らして階段を登り、6階まで着いた時。

ぼんやりとすすけた男の姿を思い出す。


6階から見える景色はさっき歩いた通りが見える。

どんな治安でどんな環境なのかはここからは分からない。


近づいてみることで分かったこと。

遠くから見るものは『綺麗』で、近くから見るものは『醜い』。


どうしてだろう。

しばらく考えた末、頭を使うのをやめて夜景から背を向ける。



.........ここあの男に会ってしまったのは運の尽き。

それとも、『かわいそう』だと思った自分への罰か。



今となってはもう、分からない。