溢れるほどの幸せをくれた君に、もう一度会えますように。

「ごちそうさまでした!お姉ちゃん、急がないと本当に遅刻しちゃう!」

自分の分のトーストをあっという間に平らげた静音が、せっかちに自分のスクールバッグを肩にかけた。

玄関のドアを開けると、冷たい冬の風が、容赦なく私たちの肌を刺す。

「静音、ちょっと待って」

靴を履いて外に出た静音の背中を、慌てて呼び止めた。

静音の首元を見ると、制服の襟《えり》が少し歪んでいて、マフラーが今にもほどけそうに緩んでいる。

「もう、そんなに焦らなくても時間は大丈夫だよ。学校近いし。ほら、じっとしてて」

私は静音の前に回り込み、少し首をくすめる妹の水色のマフラーを、優しく丁寧に巻き直してあげた。

触れた静音の首先からは、さっきまで家にいたあたたかいトーストの匂いと、静音自身の生きているぬくもりが
ふわりと伝わってくる。

「ふふ、ありがとう、お姉ちゃん。お姉ちゃんの手、なんかちょっと冷たいね」

静音は白い息を吐きながら、無邪気に笑った。

(生きている。私の目の前で、この子はちゃんと笑って、あったかい息をしている……)

もう、絶対に1人でなんか泣かせない。

「うん、行こう、静音」

私は静音の歩幅に合わせて、ゆっくり並んで歩き出した。

白い息を響かせながら、長い上り坂を2人で進んでいく。

ここから、静音の運命を変えるための、私の『2度目の冬』の戦いが始まるんだーー。