本社の自部署のデスクに向かうと、直ぐに隣のデスクの同僚男性が声を掛けてきた。
「お疲れ。本社復帰おめでとう、で良いんだっけ?」
「お疲れ様。めでたくはないけど……気持ちはありがたく受け取っておく」俺はそう答えながら、ノートパソコンを開き、設定に取り掛かった。
すると、同僚はふと息を漏らし、「相変わらずスーツが似合うな……羨ましいよ、背が高いから、何しても様になって……」と言って、椅子ごとこちらを向いてきた。
「俺は特に何もしてない。そう言う君こそ、俺と背丈も変わらないし、何着ても似合うじゃないか……」そう言いながら、社内共有データを取り込み、企業案件のメールに目を通していた。
「木崎に言われてもな……。まぁ、いいけど。それより、ここもそうだけど、他部署からも女性たちが頻繁に出入りしてるの気付いたか?」同僚は周りに目を配りながら、資料を手にして、俺のほうを窺っていた。
「いや、全く。本社に来るのは久しぶりだし、前に居た社員や派遣の顔まで覚えてられない。けど、人事異動されてるし、配置変えがあってもおかしくないんじゃないのか」
そこで俺は彼女のスケジュールを漸く確認し、手帳を手に取り、書き込んでいった。
「それもそうだな。でも……」と同僚は言い淀んで、おもむろに腰を上げると、俺のデスクに右手を置いた。そして耳打ちするように近くまで寄り、「立花がお前を探してた。気をつけたほうがいい」と言って、静かに席に戻った。
俺は手帳を閉じ、同僚から聞いた名前に考えを巡らせた。だが、昔の後輩だと思い出したところで、同僚に言われた事の意味が理解出来なかった。別に気にするような内容でも無いと考え、ノートパソコンを閉じて、自部署を後にした。
廊下を歩きながら、時計を確認し、早めに現場に行っておくか、と足を進めた。丁度エレベーターのドアが開き、素早く乗り込むと同時に、人影が通り過ぎた。
「何階ですか?」各階のボタンを前にして、俺が尋ねたとき、微かに薔薇の香りが漂ってきた。
直ぐに俺は女性だと特定したが、振り返ることはしなかった。背後の人も何も答えず、息を潜めているようだった。
俺は背後を窺い、同僚から『気をつけたほうがいい』という言葉を頭に浮かべ、監視カメラを確認し、神経を研ぎ澄ませた。
社内にセキュリティは配備されていても、何者かが侵入することは不可能ではない。それに、人事の上役が置き土産に何か仕掛けてきたとも予測出来る。そう腹を据え、ドアの上部にある各階を記すランプを見ていた。
「お疲れ。本社復帰おめでとう、で良いんだっけ?」
「お疲れ様。めでたくはないけど……気持ちはありがたく受け取っておく」俺はそう答えながら、ノートパソコンを開き、設定に取り掛かった。
すると、同僚はふと息を漏らし、「相変わらずスーツが似合うな……羨ましいよ、背が高いから、何しても様になって……」と言って、椅子ごとこちらを向いてきた。
「俺は特に何もしてない。そう言う君こそ、俺と背丈も変わらないし、何着ても似合うじゃないか……」そう言いながら、社内共有データを取り込み、企業案件のメールに目を通していた。
「木崎に言われてもな……。まぁ、いいけど。それより、ここもそうだけど、他部署からも女性たちが頻繁に出入りしてるの気付いたか?」同僚は周りに目を配りながら、資料を手にして、俺のほうを窺っていた。
「いや、全く。本社に来るのは久しぶりだし、前に居た社員や派遣の顔まで覚えてられない。けど、人事異動されてるし、配置変えがあってもおかしくないんじゃないのか」
そこで俺は彼女のスケジュールを漸く確認し、手帳を手に取り、書き込んでいった。
「それもそうだな。でも……」と同僚は言い淀んで、おもむろに腰を上げると、俺のデスクに右手を置いた。そして耳打ちするように近くまで寄り、「立花がお前を探してた。気をつけたほうがいい」と言って、静かに席に戻った。
俺は手帳を閉じ、同僚から聞いた名前に考えを巡らせた。だが、昔の後輩だと思い出したところで、同僚に言われた事の意味が理解出来なかった。別に気にするような内容でも無いと考え、ノートパソコンを閉じて、自部署を後にした。
廊下を歩きながら、時計を確認し、早めに現場に行っておくか、と足を進めた。丁度エレベーターのドアが開き、素早く乗り込むと同時に、人影が通り過ぎた。
「何階ですか?」各階のボタンを前にして、俺が尋ねたとき、微かに薔薇の香りが漂ってきた。
直ぐに俺は女性だと特定したが、振り返ることはしなかった。背後の人も何も答えず、息を潜めているようだった。
俺は背後を窺い、同僚から『気をつけたほうがいい』という言葉を頭に浮かべ、監視カメラを確認し、神経を研ぎ澄ませた。
社内にセキュリティは配備されていても、何者かが侵入することは不可能ではない。それに、人事の上役が置き土産に何か仕掛けてきたとも予測出来る。そう腹を据え、ドアの上部にある各階を記すランプを見ていた。



