「天海さん、放課後の寄り道及び買い食いは校則違反だよ。でも……君がどうしてもと言うなら、僕が風紀委員として同行し、安全を確認する義務がある!」
「わぁ〜☆ 勇斗くんが一緒なら、るなすっごく安心だなぁ〜♡(お前が来たら買い食いじゃなくてただの私への拷問になるだろクソ勇者ァ!)」
シスコンお兄様からの念願のお小遣いが入った放課後。
私は悲願の『超空間イチゴパフェ』を求め、近未来のホログラムカフェへと向かっていた。
しかし、なぜか隣にはクソ真面目な学級委員長・勇斗が歩いている。さらには――。
「……何そのパフェ。糖分の量がオーバーフロー起こしてない? データのサンプル欲しいし僕も行くよ」
ノートPCを小脇に抱えた天才ハッカー、ネオンまで気だるげについてきていた。
当然、私のスクールバッグはガタガタと激しく揺れている。
『魔王様……! この男二人、今すぐ吸引して……!』
カバンの隙間からデスモの不穏な声が漏れるのを、私は必死に肘で押さえ込んでいた。もう、行く前からカオスである。
てか私がこのメンバー纏めなきゃなの?憂鬱すぎるでしょ…。
なんとかカフェに到着し、待ちに待った『超空間イチゴパフェ』なるものがテーブルに運ばれてくる。
「わぁぁぁぁ〜〜〜!!♡すっごく綺麗♡かわいい〜♡」
ホログラムの光がパフェの周囲できらめき、まるで宝石のようだ。
念願のいちごパフェ、いざ実食!!
「いただきまぁ〜す☆」と私がぶりっこ全開でスプーンを構えた、まさにその瞬間だった。
――ドゴォォォォン!!!
カフェの自動ドアがビーム兵器で吹き飛ばされ、激しい爆風が店内を襲った。
「ぎゃははは! 待たせたな、赤髪のバグ野郎! 今日こそ俺たち『サイバー犯罪組織』の力を思い知れ!」
現れたのは、先日ボコボコにしたはずのサイバー男爵。
しかも今回は、前回より3倍は巨大な、重機関銃を搭載したドローンを従えている。
「ひぃっ! 逃げろ!」
「何よあれぇ!?」
店内がパニックになる中、巨大ドローンが銃口をこちらに向け、赤いロックオンレーザーが私を捉えた。
(フッ……下等生物め。我が結界『黒銀の盾』で、その鉄クズごと塵にして――)
私が魔力を練り上げ、結界を展開しようとした、その刹那。
「危ない、るなさん!! 君は僕が守る!!」
「えっ?(ちょっ待っ――)」
勇斗がものすごい勢いで私を突き飛ばし、覆い被さってきた。
そのせいで、私の魔力回路の計算が完全に狂い、展開しかけた結界の軌道が大きくズレる。
ズガガガガガガッ!!!
敵の放った重機関銃の弾丸が、結界をすり抜けて私の真横を激しく穿った。
吹き飛んだ鋭いコンクリートの瓦礫が、そのまま私の右腕にグシャッと突き刺さる。
「っつ……!」
激痛。
そして衝撃で魔力回路が一瞬でショートし、いつもの力がうまく練り込めなくなってしまった。
(勇者め余計なことを!私のパーフェクトな防御を崩しやがって、一度冥界に送るぞコラァァー!!)
心の中で最大級の悲鳴と呪詛を吐き散らす。右腕の傷がかなり深いな。
指パッチン一発で瞬殺する魔法が撃てない。完全なピンチだ。
「ははは! 当たったぞ! メカども、畳み掛けろ!」
サイバー男爵が勝ち誇る。ドローンが次の一撃をチャージし始めた。
「るな、右腕の出力が落ちてる。僕が敵の動きを10秒止める、その隙にリブートして!」
ーカタカタカタカタカタカタ、ッターン!
ネオンがすかさずノートPCのキーを猛烈な速度で叩き始めた。
『システムハッキング開始……敵の制御OSにバグを注入!』
ピピッ! ジジジ……!
ネオンの超高速ハッキングにより、巨大ドローンの砲口が火花を散らし、ガタガタと動作を停止する。
「おのれ、ハッカーめ! 予備システムに切り替えろ!」
男爵が叫ぶ。
まだ腕の傷は回復しきれていない、まずいどうする!?
その時。
『魔王様に傷を負わせるとは万死に値するぅー! 魂ごと配線を刈り取る!!』
カバンから飛び出したデスモが最大出力のモーター音を響かせ、ドローンの車輪の隙間に文字通り特攻した。
敵の基盤に無理やり突っ込み、バチバチと激しいショートを起こして敵の予備システムを完全に焼き切る。
2人が稼いでくれた、わずか10秒。私の魔力回路が一時的に再起動した。
「……よくも我が右腕を」
私はゆっくりと立ち上がった。
髪が逆立ち、目の色が普段のワインレッドから、怒りの鮮烈な黄色へと変わる。
「魔王に喧嘩を売るとはいい度胸だ。……塵になれ」
勇斗が気絶しているのを確認し、私は左手を前方へ突き出した。
「『極大滅殺光波』」
手のひらから放たれたのは、空間そのものを消滅させる純粋な闇の光流。
超重装甲ドローンは、悲鳴を上げる暇さえなく、分子レベルで分解されて跡形もなく消滅した。
「ば、化け物めぇーーー!!」
サイバー男爵は腰を抜かし、泣きながら逃げ去っていった。
数分後。
「……う、ううん。僕は一体?」
勇斗が目を覚ました。周囲はボロボロだが、敵の姿はどこにもない。
そして、るなの右腕にはネオンが巻いてくれた血の滲んだ白い包帯があった。
「るなさん! 怪我を!? 済まない、僕の力が足りなかったばかりに、君を危険に……!」
勇斗が本気でショックを受け、ガックリと肩を落とす。
「ううん、違うよぉ〜♡勇斗くんが最初にるなを庇ってくれたから、このくらいで済んだんだよぉ♡ 勇斗くん、すっごく格好よかったよ♡」
私は引きつったぶりっこ笑顔で、勇斗の頭を優しく撫でてあげた。
(お前のせいで怪我したんだよ次やったらマジで消し飛ばすからな♡)
私は身を挺したせいでボディが少し焦げたデスモを小脇に抱え帰路についたのであった。
