双恋〜大好き、でも譲れない!〜

​(な、なに……この人……っ!?)

​心臓がドックン!! と大きな音を立てて跳ね上がる。

​あまりの顔面の良さと、腕から伝わる力強い体温に、全身の血が頭に上っていくのが分かっ
た。

​「……手、離すぞ。立てるか?」

​「あ……は、はいっ! ありがとうございます……!」

​彼がそっと手を離すと、まっちゃんも「あ、ありがとうございます……!」と真っ赤な顔で
ペコペコ頭を下げていた。

​「人混み、気をつけて見ろよ」

​彼は短くそう言い捨てると、一度も振り返ることなく、ポケットに手を突っ込んだまま大勢
の生徒の中へ消えていった。

呆然とその背中を見送っていた私に、まっちゃんが興奮した面持ちでしがみついてきた。
​
「ち、ちづちゃん……! 今の人、見た……!?」

​「う、うん……すごかったね……」

​「かっこよすぎる……! 漫画から出てきたみたいだった……!」

​胸の奥が、まだ静まらない。

​ぶっきらぼうな口調と、あの包み込むような優しい手つきのギャップ。
​

(私……なに動揺してるんだろ……)