「話せば、わかるってもんでもないんじゃないですか?」

「そうかな?」

「世の中には、話の通じない相手も五万といると思いますよ。

無免許でひき逃げしても平気な顔で遊んでいる奴もいれば、体を売って何も感じてない女子高生もいる。

そんな奴らといくら話し合ったとしても、俺はきっと理解できない」

「そっか、そうかもね」

「同じ日本人で、同じ日本語話してるのに、内容が理解できないなんて日常茶飯事ですよ。

家庭教師のバイトしてますけど、こいつら人種が違うんじゃないかって思うこと多いですよ」

「うん…。タカ君が言うこともよくわかる。

でもね、私、臨床心理士になりたいんだ。

スクールカウンセラーになりたいの。

同じ人間なんだもの、理解したい、理解できるって信じていたいんだ」