「俺は、すぐにわかりましたよ」
「……?」
先生が小さく首を傾げる。
すると、椎名くんはそんな先生をじっと見つめて──。
「…………この人が、“ナツさん”だって」
「っ、!!」
その言葉が、彼の口からこぼれ落ちた瞬間。
それまでゆらゆらと揺れていた先生の瞳が、今までにないほど大きく見開かれた。
「……どう、して…………」
───掠れた声。
問いかけようとしたのだろう。
けれど、あまりの驚きに言葉になりきらず、震えた吐息だけが先生の唇から零れ落ちる。
そんな先生を見つめながら、椎名くんはゆっくりと目を細めた。
「写真、見せてもらってましたから。……『これが俺の彼女だ』って、それはもう自慢げに」
「っ、誰に、きいたの……?」
先生の声が震える。
「誰からだと思います?」
そう言って、椎名くんは狼狽える先生を面白がるように、わざと答えを焦らした。
「……たぶん、今センセーが思い浮かべている相手で間違いないと思いますよ」
「っ、」
───彼は、どこまでもズルい。
答えのすぐ近くまで連れていくくせに、肝心なところは何ひとつ教えてくれない。
……でも。
きっと、先生はもう辿り着いているんだと思う。
……その証拠に、彼女の頬を一筋の雫が静かにつたっていた。
「っ、じゃあ、貴方は…っ……」
「そうです」
椎名くんは、ほんの少しだけ息を吐いて。



