「……じゃあ、俺はそろそろ帰ります。今日は色々聞けたし」
そう言って椎名くんは立ち上がる。
「椎名くん……」
「大丈夫ですって」
心配そうに呼び止める先生に、彼は振り返って笑った。
「センセーが思ってるより、俺、結構まともじゃないんで」
「……そういう問題じゃないでしょう」
「じゃあ、どういう問題ですか?」
「それは……」
先生が困ったように言葉を濁す。
その様子を見て、椎名くんは楽しそうに小さく笑った。
「……また来ますね、センセー」
「え?」
「約束したでしょ」
そう言い残して、彼は保健室の扉へと歩き出す。
「……じゃあ、また明日」
先生が、ほんの少しだけ笑った。
「はい。また明日」
その言葉に、椎名くんも笑う。
「約束ですよ、センセー。」
そう言って、彼は保健室の扉に手をかけた。
「じゃあ、俺帰りますね」
「気をつけてね」
「はーい」
いつもの軽い返事。
いつもの、少しだけ人を食ったような笑顔。
……そして。
───ガラッ。
重い音を立てて、扉が閉まった。



