愛する人の代わりにはなれますか【10/10完結】



「……じゃあ、俺はそろそろ帰ります。今日は色々聞けたし」


そう言って椎名くんは立ち上がる。


「椎名くん……」

「大丈夫ですって」


心配そうに呼び止める先生に、彼は振り返って笑った。



「センセーが思ってるより、俺、結構まともじゃないんで」

「……そういう問題じゃないでしょう」


「じゃあ、どういう問題ですか?」

「それは……」



先生が困ったように言葉を濁す。


その様子を見て、椎名くんは楽しそうに小さく笑った。



「……また来ますね、センセー」

「え?」


「約束したでしょ」



そう言い残して、彼は保健室の扉へと歩き出す。



「……じゃあ、また明日」


先生が、ほんの少しだけ笑った。



「はい。また明日」


その言葉に、椎名くんも笑う。



「約束ですよ、センセー。」



そう言って、彼は保健室の扉に手をかけた。



「じゃあ、俺帰りますね」

「気をつけてね」


「はーい」



いつもの軽い返事。

いつもの、少しだけ人を食ったような笑顔。




……そして。


───ガラッ。

重い音を立てて、扉が閉まった。