帰還の時間もあるので、日が傾く前にはここを出立しなければならない。そろそろ、みんなの作業を終わりにしてもらう時間だ。
すると、エレナが少し慌ててやって来た。
「ニアはこのままここで護衛を。それと、市民の作業を止めて休憩所付近に集まっていて。リナは至急、北東の警戒に合流」
「エレナ、どうしたの?」
「いつもなら帰巣するはずの時間帯なのに、北東だけスライムの数が増えてきているの。対処自体は可能な数なんだけど、一応警戒はしておかないとってトウマの指示よ」
「うん、分かった! エレナは先に行ってて、すぐに向かう」
「リナ、気をつけるのよ?」
「うん、ニアちゃんもみんなのことよろしくね!」
私は北東へと駆け出す。確か北東は元々トウマを含む数人で当たっていたはずだけど、今はビッグラットや他のスライムが帰巣する時間帯だから、戦力が集まっている。
それに、あのギルド長がいつでも参戦できる位置で見守っているのが見えた。
「……帰巣が遅いですね」
ギルド長は遠くで何かを呟いていた。
「トウマ、エレナ」
「来たな。ここはオレとエレナで十分だ。向こうが少し数が多い。手伝ってやってくれ」
トウマはそう言いながら、目の前のスライムへ剣を振り下ろした。
刃が柔らかな体を断ち、その勢いのまま地面へ鈍く突き刺さる。粘ついた液体が弾け、土の上へ散った。
「ふぅ。『身体強化』!」
私は魔法で自分の肉体を強化する。
体に魔力を巡らせると、足取りが少し軽くなり、剣を握る腕にも力が乗った。
エレナみたいに速く動けないし、トウマみたいに力強くもなれない。でも、私でもできることはある。
小柄な剣を構え、一匹だけ群れから離れていたスライムへ踏み込む。
一閃。
少しだけ加速した刃が、逃げる間もなくその体を両断した。
そのままの勢いで私は指示された場所へ合流し、残りのスライムを討伐していく。
その時、仲間が倒されたのを見たはずのスライムが、私へ近づいていることに、私は気づいていなかった。
「うおおおお!」
大きな両手剣を雄叫びと共に振りかざす。
スライムは臆病なので、仲間が倒されるとその場から数歩離れる反応を見せる。だから、その逃げ場に目算をつけていれば――
「私でも簡単に倒せる!」
狙った先へ踏み込み、刃を振るう。
みんながしっかりと考えて動けている。自分自身も、戦闘の緊張感は感じるけれど、ちゃんとこれまでの訓練を活かして動けるようになってきているのが分かる。
その後も順調にスライムの数は減っていき、最後の一匹が倒されたのを見て、私は身体強化を解き、胸を撫で下ろした。
「リナ、まだよ! もう一匹いる!!」
「――えっ?」
背後からエレナの叫び声が響く。
振り返った先にいたのは、さっき仲間を倒した時にも逃げず、私へ近づいてきていた個体だった。
もう、すぐそこまで迫っている。
「え、やだ――」
スライムも魔物だ。その液体には弱いけれど酸のような性質があるし、鼻や口を塞がれれば息ができない。当然、スライムに殺された人もいる。
剣は間に合わない。
魔力も、体力も残っていない。
スライムが私にまとわりつく方が、確実に早い。
エレナにも疲労が見える。あの距離では、間に合わない。
「誰か、助けて」
私は冒険者として最もしてはいけない行為だが、祈るように目を瞑った。
その瞬間、ほんの少し、かすかに空気が押されるような感覚がした。
「大丈夫ですか、リナさん?」
目を開けると、透明な幕にぶつかるスライムと、そのスライムと私の間に立つギルド長の姿があった。
すると、エレナが少し慌ててやって来た。
「ニアはこのままここで護衛を。それと、市民の作業を止めて休憩所付近に集まっていて。リナは至急、北東の警戒に合流」
「エレナ、どうしたの?」
「いつもなら帰巣するはずの時間帯なのに、北東だけスライムの数が増えてきているの。対処自体は可能な数なんだけど、一応警戒はしておかないとってトウマの指示よ」
「うん、分かった! エレナは先に行ってて、すぐに向かう」
「リナ、気をつけるのよ?」
「うん、ニアちゃんもみんなのことよろしくね!」
私は北東へと駆け出す。確か北東は元々トウマを含む数人で当たっていたはずだけど、今はビッグラットや他のスライムが帰巣する時間帯だから、戦力が集まっている。
それに、あのギルド長がいつでも参戦できる位置で見守っているのが見えた。
「……帰巣が遅いですね」
ギルド長は遠くで何かを呟いていた。
「トウマ、エレナ」
「来たな。ここはオレとエレナで十分だ。向こうが少し数が多い。手伝ってやってくれ」
トウマはそう言いながら、目の前のスライムへ剣を振り下ろした。
刃が柔らかな体を断ち、その勢いのまま地面へ鈍く突き刺さる。粘ついた液体が弾け、土の上へ散った。
「ふぅ。『身体強化』!」
私は魔法で自分の肉体を強化する。
体に魔力を巡らせると、足取りが少し軽くなり、剣を握る腕にも力が乗った。
エレナみたいに速く動けないし、トウマみたいに力強くもなれない。でも、私でもできることはある。
小柄な剣を構え、一匹だけ群れから離れていたスライムへ踏み込む。
一閃。
少しだけ加速した刃が、逃げる間もなくその体を両断した。
そのままの勢いで私は指示された場所へ合流し、残りのスライムを討伐していく。
その時、仲間が倒されたのを見たはずのスライムが、私へ近づいていることに、私は気づいていなかった。
「うおおおお!」
大きな両手剣を雄叫びと共に振りかざす。
スライムは臆病なので、仲間が倒されるとその場から数歩離れる反応を見せる。だから、その逃げ場に目算をつけていれば――
「私でも簡単に倒せる!」
狙った先へ踏み込み、刃を振るう。
みんながしっかりと考えて動けている。自分自身も、戦闘の緊張感は感じるけれど、ちゃんとこれまでの訓練を活かして動けるようになってきているのが分かる。
その後も順調にスライムの数は減っていき、最後の一匹が倒されたのを見て、私は身体強化を解き、胸を撫で下ろした。
「リナ、まだよ! もう一匹いる!!」
「――えっ?」
背後からエレナの叫び声が響く。
振り返った先にいたのは、さっき仲間を倒した時にも逃げず、私へ近づいてきていた個体だった。
もう、すぐそこまで迫っている。
「え、やだ――」
スライムも魔物だ。その液体には弱いけれど酸のような性質があるし、鼻や口を塞がれれば息ができない。当然、スライムに殺された人もいる。
剣は間に合わない。
魔力も、体力も残っていない。
スライムが私にまとわりつく方が、確実に早い。
エレナにも疲労が見える。あの距離では、間に合わない。
「誰か、助けて」
私は冒険者として最もしてはいけない行為だが、祈るように目を瞑った。
その瞬間、ほんの少し、かすかに空気が押されるような感覚がした。
「大丈夫ですか、リナさん?」
目を開けると、透明な幕にぶつかるスライムと、そのスライムと私の間に立つギルド長の姿があった。



