その後も、警戒態勢を取ることはありながらも、私たちは予定通りの時間内で目的地へとたどり着いた。
草原が広がり、涼しい風が吹き抜ける。さっきまで談笑していた人々は、今は作物を刈り取り、運び、選別する仕事人の顔をして汗を流している。
「みんなが集中できるように、私も頑張らないと」
畑や田んぼが広がる耕作地帯は、市民の方々が最も多く出入りする警戒地区になる。依頼内容にもあったように、塀や柵でくくっていてもスライムやビッグラットなどは餌を求めて入ってくるからだ。
でも、そんな地域でも人々が農作や畜産、資源の採取など生活に欠かせない営みを安心してできるように、私たち冒険者はいるのだ。
「そういえば、さっき言いかけてたの何だったの?」
今日初めて会った冒険者ニアちゃんに私は問いかける。
「あの方の二つ名ね?私がこのギルドに来た理由、あの方の二つ名は《スライム狩り》よ!」
ニアちゃんは腰に手を当てると、小さな胸を張って得意げに顎を上げた。
なんて可愛い、じゃなかった。なんでニアちゃんが偉そうにしているんだろう?
というよりも――
「え、《スライム狩り》?」
「そう、《スライム狩り》!」
ニアちゃんは胸を張ったまま、さらに得意げに頷いた。
「え、スライムなら私も狩ったことあるよ?」
なんなら、このギルドのルーキーの訓練でスライム討伐について5時間くらいやった。もちろんその時に、私含めてみんながスライムを倒しているので、ニアちゃんも当然スライムを狩った経験はあるはずだ。
「何匹?」
「え?」
「ギルド長がこれまでに狩ったスライムの数は、32,011体よ?」
ニアちゃんは相変わらずの体勢だった。なんなら鼻が少し伸びてきているかもしれない。
「訂正です、ニアさん。正確には31,205体ですよ」
また急に現れたギルド長。途方もない数字に圧倒されそうになるけど、私はどうしても納得できない。
「竜種討伐を果たした《竜殺し》、かつて災禍を救ったとされる伝承の《剣聖》、は分かります。なんで、スライムで二つ名が?」
「それは――僕が聞きたいですね」
「へ?」
ギルド長はまくしたてるように続ける。ニアちゃんは憧れの存在が近くにいることで失神してる。任務中だぞ、おい。
「僕だって小さい時には初代《竜殺し》に憧れましたよ!でも、僕は竜なんて狩れないし、ましてやフリーボアも怖いです。さっきも、来ないでくれよってめっちゃ思ってました!」
なんなのこの人?ニアちゃんはなんでこんな人に憧れてるの?竜種を狩れないのは良いけど、フリーボアにビビるギルド長ってどうなの?
「傷つくの、死ぬの怖いんです。だから、あなたたちが自分たちで安全に任務をこなしていること、すごく嬉しいんですよ?」
そう言って、ギルド長はまた農作をする人々の中へと戻っていった。
周りでは、時折スライムを追い払う声や、ビッグラットと交戦する音が聞こえる。
それでも畑の中では、鎌が茎を切る音がして、籠いっぱいの作物を抱えた人が笑いながら仲間を呼んでいる。少し離れたところでは、休憩に入った人たちが水を回し飲みしながら、今年の出来について楽しそうに話していた。
魔物がいることも、ここが警戒地区であることも変わらない。
なのに、人々は怯えていなかった。
今日採れた作物の話をして、家に持ち帰る量を相談して、仕事が終われば城下町へ帰る。そんな当たり前のことを、当たり前みたいに続けている。
これって実はものすごく、凄いことなんじゃないかって思った。
草原が広がり、涼しい風が吹き抜ける。さっきまで談笑していた人々は、今は作物を刈り取り、運び、選別する仕事人の顔をして汗を流している。
「みんなが集中できるように、私も頑張らないと」
畑や田んぼが広がる耕作地帯は、市民の方々が最も多く出入りする警戒地区になる。依頼内容にもあったように、塀や柵でくくっていてもスライムやビッグラットなどは餌を求めて入ってくるからだ。
でも、そんな地域でも人々が農作や畜産、資源の採取など生活に欠かせない営みを安心してできるように、私たち冒険者はいるのだ。
「そういえば、さっき言いかけてたの何だったの?」
今日初めて会った冒険者ニアちゃんに私は問いかける。
「あの方の二つ名ね?私がこのギルドに来た理由、あの方の二つ名は《スライム狩り》よ!」
ニアちゃんは腰に手を当てると、小さな胸を張って得意げに顎を上げた。
なんて可愛い、じゃなかった。なんでニアちゃんが偉そうにしているんだろう?
というよりも――
「え、《スライム狩り》?」
「そう、《スライム狩り》!」
ニアちゃんは胸を張ったまま、さらに得意げに頷いた。
「え、スライムなら私も狩ったことあるよ?」
なんなら、このギルドのルーキーの訓練でスライム討伐について5時間くらいやった。もちろんその時に、私含めてみんながスライムを倒しているので、ニアちゃんも当然スライムを狩った経験はあるはずだ。
「何匹?」
「え?」
「ギルド長がこれまでに狩ったスライムの数は、32,011体よ?」
ニアちゃんは相変わらずの体勢だった。なんなら鼻が少し伸びてきているかもしれない。
「訂正です、ニアさん。正確には31,205体ですよ」
また急に現れたギルド長。途方もない数字に圧倒されそうになるけど、私はどうしても納得できない。
「竜種討伐を果たした《竜殺し》、かつて災禍を救ったとされる伝承の《剣聖》、は分かります。なんで、スライムで二つ名が?」
「それは――僕が聞きたいですね」
「へ?」
ギルド長はまくしたてるように続ける。ニアちゃんは憧れの存在が近くにいることで失神してる。任務中だぞ、おい。
「僕だって小さい時には初代《竜殺し》に憧れましたよ!でも、僕は竜なんて狩れないし、ましてやフリーボアも怖いです。さっきも、来ないでくれよってめっちゃ思ってました!」
なんなのこの人?ニアちゃんはなんでこんな人に憧れてるの?竜種を狩れないのは良いけど、フリーボアにビビるギルド長ってどうなの?
「傷つくの、死ぬの怖いんです。だから、あなたたちが自分たちで安全に任務をこなしていること、すごく嬉しいんですよ?」
そう言って、ギルド長はまた農作をする人々の中へと戻っていった。
周りでは、時折スライムを追い払う声や、ビッグラットと交戦する音が聞こえる。
それでも畑の中では、鎌が茎を切る音がして、籠いっぱいの作物を抱えた人が笑いながら仲間を呼んでいる。少し離れたところでは、休憩に入った人たちが水を回し飲みしながら、今年の出来について楽しそうに話していた。
魔物がいることも、ここが警戒地区であることも変わらない。
なのに、人々は怯えていなかった。
今日採れた作物の話をして、家に持ち帰る量を相談して、仕事が終われば城下町へ帰る。そんな当たり前のことを、当たり前みたいに続けている。
これって実はものすごく、凄いことなんじゃないかって思った。



