* * *
城下町から遠ざかるように進むと、少しずつ遠くに自然が広がっていくのが見えてくる。
竜が住むという切り立つ山。貴重な原石や素材が取れる危険な森。比較的安全に探索できる平原でさえも、冒険者の同行が必要だ。
そんな、外への関所が見えてくる場所に、私の所属するギルド《ヤドリギ》はある。
聞いた話によれば、私が生まれるよりもずっとずっと前からある由緒あるギルドなんだとか。おじいちゃんが勧めるから、ここを選んだんだけどまだ私はなんでおじいちゃんがヤドリギを推したのか分かっていない。
ログハウス風の建物には、大きな植物のツタが巻きついている。入口の前の階段を駆け上がり、私は転がるようにしてギルドハウスの扉を開ける。
「すみません、遅くなりました!! ぴやぁ!」
扉が勢いよく戻ってきて、私は強くおでこを打ち付け、変な声が出た。
1階ロビーに居た人たちの冷たい視線が突き刺さる。
「あ、ごめんなさい」
私はそう言って、ゆっくりと扉を閉める。
「ちょっとリナ! こんな大事な日にあなたは!」
動きやすそうな革の軽装に、腰には小さなナイフといくつもの道具袋。背中には短弓を背負ったエレナが、遠くから私を叱責する。
エレナの近くには、今回の任務で一緒になるトウマや、初めて見る冒険者も何人か居た。
「あなたがリナさんですね。良かった、これで全員揃いましたねぇ」
若手冒険者は私くらいの年齢層が多い。私は14歳で、エレナは16歳。その中で、その人だけは明らかに年上だった。三十代……くらいだろうか。
「あ、すみません。遅くなりました。あれ? 今日ってミルヴスさんが引率って聞いてたんですけど……」
今日はルーキー冒険者たちが冒険者として認められるための最後の依頼を受ける日だった。
ギルド連盟に加盟すると《冒険者》として活動ができるようになるけれど、登録だけでは自由に活動はできない。まずは、新人として認められるために、登録したばかりのルーキーはギルド連盟の指定依頼を一定数こなさないといけないのだ。
「ミルヴスくんは、ちょっと所用が入ってしまいまして。今日は僕がみなさんの引率役になります」
その人は柔らかい口調でそう言う。でも、なんか、なんだろう。威厳? みたいなのは感じられなかった。
「さて、では今回の依頼の確認をしましょう。僕はあくまでも、皆さんに危険があった場合に対処するだけです。作戦も実行も、そして帰還するまで、みんなでやってください」
そう言って、その人は近くにあった椅子に腰掛けると、足を組んで周辺地図を手に取った。
「では、オレが今回の依頼で指揮を任されたトウマだ。宜しく頼む」
エレナと仲良くなった後に、何回か一緒に任務をこなしたトウマが、中央に踏み出してそう言った。
鎧と剣がこすれて音を立てている。
トウマは地図をテーブルに広げる。
「今回の依頼は、市民の作物の採取中の護衛と、それにかかる下位の魔物の討伐だ。想定されるモンスターはスライムやビッグラットなど。周辺には牛が飼われているので、もしかしたら牛を狙った大型のモンスターも出ないとは限らない」
トウマは何度も何度も読み込んだのが分かるくらい、すらすらと依頼内容を振り返っていく。時折、依頼の巻物には書かれていなかった情報も付け足されている。たぶん、自分で調べたんだ。
「負けてらんないな……!」
心の中で私はそう言った。
「ここからは、配置の振り分けをしていく。もし、異論があれば遠慮なく言ってくれ」
そうして私たちは配置を決め、それぞれの装備や所持品を確かめて外に出るのだった。
「それでは出発だ!」
トウマの掛け声で、皆が頷く。そんな様子を見ていた引率の人は、なんだか少し嬉しそうに笑っているようにも見えた。
城下町から遠ざかるように進むと、少しずつ遠くに自然が広がっていくのが見えてくる。
竜が住むという切り立つ山。貴重な原石や素材が取れる危険な森。比較的安全に探索できる平原でさえも、冒険者の同行が必要だ。
そんな、外への関所が見えてくる場所に、私の所属するギルド《ヤドリギ》はある。
聞いた話によれば、私が生まれるよりもずっとずっと前からある由緒あるギルドなんだとか。おじいちゃんが勧めるから、ここを選んだんだけどまだ私はなんでおじいちゃんがヤドリギを推したのか分かっていない。
ログハウス風の建物には、大きな植物のツタが巻きついている。入口の前の階段を駆け上がり、私は転がるようにしてギルドハウスの扉を開ける。
「すみません、遅くなりました!! ぴやぁ!」
扉が勢いよく戻ってきて、私は強くおでこを打ち付け、変な声が出た。
1階ロビーに居た人たちの冷たい視線が突き刺さる。
「あ、ごめんなさい」
私はそう言って、ゆっくりと扉を閉める。
「ちょっとリナ! こんな大事な日にあなたは!」
動きやすそうな革の軽装に、腰には小さなナイフといくつもの道具袋。背中には短弓を背負ったエレナが、遠くから私を叱責する。
エレナの近くには、今回の任務で一緒になるトウマや、初めて見る冒険者も何人か居た。
「あなたがリナさんですね。良かった、これで全員揃いましたねぇ」
若手冒険者は私くらいの年齢層が多い。私は14歳で、エレナは16歳。その中で、その人だけは明らかに年上だった。三十代……くらいだろうか。
「あ、すみません。遅くなりました。あれ? 今日ってミルヴスさんが引率って聞いてたんですけど……」
今日はルーキー冒険者たちが冒険者として認められるための最後の依頼を受ける日だった。
ギルド連盟に加盟すると《冒険者》として活動ができるようになるけれど、登録だけでは自由に活動はできない。まずは、新人として認められるために、登録したばかりのルーキーはギルド連盟の指定依頼を一定数こなさないといけないのだ。
「ミルヴスくんは、ちょっと所用が入ってしまいまして。今日は僕がみなさんの引率役になります」
その人は柔らかい口調でそう言う。でも、なんか、なんだろう。威厳? みたいなのは感じられなかった。
「さて、では今回の依頼の確認をしましょう。僕はあくまでも、皆さんに危険があった場合に対処するだけです。作戦も実行も、そして帰還するまで、みんなでやってください」
そう言って、その人は近くにあった椅子に腰掛けると、足を組んで周辺地図を手に取った。
「では、オレが今回の依頼で指揮を任されたトウマだ。宜しく頼む」
エレナと仲良くなった後に、何回か一緒に任務をこなしたトウマが、中央に踏み出してそう言った。
鎧と剣がこすれて音を立てている。
トウマは地図をテーブルに広げる。
「今回の依頼は、市民の作物の採取中の護衛と、それにかかる下位の魔物の討伐だ。想定されるモンスターはスライムやビッグラットなど。周辺には牛が飼われているので、もしかしたら牛を狙った大型のモンスターも出ないとは限らない」
トウマは何度も何度も読み込んだのが分かるくらい、すらすらと依頼内容を振り返っていく。時折、依頼の巻物には書かれていなかった情報も付け足されている。たぶん、自分で調べたんだ。
「負けてらんないな……!」
心の中で私はそう言った。
「ここからは、配置の振り分けをしていく。もし、異論があれば遠慮なく言ってくれ」
そうして私たちは配置を決め、それぞれの装備や所持品を確かめて外に出るのだった。
「それでは出発だ!」
トウマの掛け声で、皆が頷く。そんな様子を見ていた引率の人は、なんだか少し嬉しそうに笑っているようにも見えた。



