わたくしの優しかった護衛騎士が、変わってしまった。
わたくしはアーリア・ディ・ジャラディア。ジャラディア帝国の第三皇女。皇女と言っても、兄も姉もたくさんいるから、必要最低限の公務と社交をするだけの気楽な立場よ。
「ご婚約、おめでとうございます。アーリア皇女殿下。エスクード公爵」
わたくしの隣に立つ、眩しいくらい顔の整った男はライカン・エスクード公爵。わたくしの婚約者。
今日はわたくし達の婚約披露パーティー‥‥なのだけれど。
微笑むわたくしとは対照的に、『無』の表情を貼り付けたこの男。
「公爵。不快なら手を離してもいいのよ?」
ブルーグレーの瞳がアーリアを捉えて鋭く射抜く。
「いえ。このような喜ばしい日に、何も不快な事などありません」
びっくりする程の無表情の後に、眉間に皺を寄せながらライカンは言った。
(不快でなければ何だというの。その顔は)
ライカンが元来表情がない訳ではないことを、アーリアは知っている。本来は優しく微笑い、柔らかい表情をする男であったのだが、3年前から‥‥婚約が決まってから特に、表情が死んでいった。
