ケンカの天才は、王子様に勝てない。

あたしたちの家の隣はジムになってる。
ここはお父さんが作ってくれたあたしとお兄ちゃんたちが日々練習する場所で、リングはもちろんサウンドバッグや筋トレの機械もいくつかある。

手にボクシンググローブをはめたらキュッと身が引き締まる、ボクシングトレーニングジムなんだ。

「いくぞ!」

「「はいっ!!」」

慎一お兄ちゃんが呼びかけたら、彰二お兄ちゃんと一緒に大きな声で応(こた)える。

慎一お兄ちゃんも彰二お兄ちゃんも高校ではボクシング部に入ってるめっちゃくちゃ強い選手で、あたしもそんな2人に負けないぐらい強くなりたくて。

「男は!」

「「度胸!」」

「女も!」

「「度胸!」」

「女は!」

「「愛嬌!」」

「男も!」

「「愛嬌!」」

もっともーっと強くなりたい、お兄ちゃんたちに心配されないぐらい強く。

そしたら慎一お兄ちゃんにケンカの心配だってされなくなると思うんだ、あたしがもっと強くなればきっと。

「よーっし、今日はこれぐらいにしとくか!」

「慎兄(しんにぃ)、今日もキレキレじゃん!」

「彰二もパンチのフォーム前よりよくなってたぞ」

「マジで!?最近はひたすらスパークリングしてんだよね~!」

ポタポタと流れてくる汗をタオルで拭いた。

運動した後ってスッキリするんだよね、汗でベタベタなんだけどそれも気持ちいいっていうかすがすがしい気分になる。今日もがんばったって思えるし。

「三千華、掃除して終わるぞ!」

「はい!」

もちろんちゃんと掃除まで、それが我が家の稽古の終わりだからね!

で、これが終わったら宿題しなきゃなんだけど。
運動は好きだけど、勉強は…

嫌いなわけじゃないけど今日は宿題が多くて嫌だなぁ~…

「……。」

嫌なことは考えたくなくて、ふと思い出しちゃった。


あの子、キレイだったなぁ。

あんな子、見たことなくてびっくりしちゃった。


どこに住んでる子なんだろう?



あんなキラキラした王子様みたいな子ー…