唯織くんは素直にデレない

「また、ケンカしているのね」

「あァ? ッセーんだよ、テメェにゃカンケーねぇだろーが」

そんな乱暴な物言いにも表情を変えることなく、紬生は冷めた目をチラッと向けて、唯織の横を通り過ぎていく。

通り過ぎざま目に入った彼女の肩が、少しだけ震えているように見えた。

「ええ、そうね。確かにあなたの言う通り私には関係ないことだったわ。あなたのすることになんて、少しも興味ないから。安心して」

「はァ? ウッセーんだよ。俺だってテメェにキョーミなんかこれっぽっちも持ってねェっつーの」

「……だったらいちいち絡(から)んでくるの、止(や)めてくれないかしら」

「かっ、絡んでねぇわ! 自意識過剰なんだよ、この、ぶ、ブス! さっさと消えろや」

「大丈夫、そんなに興奮しなくてもすぐに消えるわ」

紬生はうつむきながらあくまで冷静なトーンで答えると、来た時よりも速度を上げて足早に去っていった。

フンッ

唯織は鼻を鳴らす。

姿勢良くスタスタと歩いていく紬生の背中を見送った。

その姿がどんどん小さくなっていく。