英雄として死んだはずの夫が、隣国で結婚して私への褒美を盗みに来ました

 だからこそ、泣いて縋りつきたかった。
 行かないでと泣きわめき、どうしても引き留めたかった。

 たえそれが許されないことだとしても……。

「無事に帰ってきて下さいね」
「ああ。分かっているよ、エルザ。行ってくる」
「いってらっしゃい、アレン」

 どうかどうか無事でいて。
 声にならない叫びを押し込めて、私はただアレンの背を見送った。

 そして一人屋敷のエントランスに残された私は、祈ることしか出来なかった。