英雄として死んだはずの夫が、隣国で結婚して私への褒美を盗みに来ました

「もう一度プロポーズからなんて……よく言ったものね」

 力を込めれば、指輪はスルリと抜け落ちる。
 わずかに残った跡だけが、今の私の心を映しているようだった。

 でももう未練などない。
 見上げれば、雲一つないどこまでも青く晴れ渡った空。
 
「さよなら……」

 私は右手に掴んだ指輪を大きく空高く放り投げる。
 日の光を浴びたそれがきらりと光り、放物線を描きながら天へと舞い上がる。

 過去の私、偽りの約束、大切だと思い込んでいた思い出たちを乗せて、指輪は消えていった。

「ふふふ」

 胸のつかえが消えていく。
 過ぎて行く涼し気な風すら、私を祝福してくれている気がした