欲しがる妹に婚約者をあげたら、なぜかキレられました。これって私が悪いのでしょうか?

「お父様、お母様、もう私はいなくなったものだと思って下さいね。お母様の願い通り、二度とここには顔を出しませんから」

 イライラとしたように母が私から顔を背ける。
 こんな時でも父はただ、おろおろと私と母の顔を交互に見比べるだけ。

「ルシアン、あなたもずっと一緒にいたかった相手が生涯傍にいてくれるのだから良かったわね。もう体の関係とか、そんなの気にしなくていいんだし」

 このまま結婚出来ればの話だけど、と言わないだけがせめてもの私の優しさだ。

 そして最後に妹の顔を見る。

「これで私がここで持っていたすべてのモノはあなたにあげたわ。もう欲しいものなんてないでしょう? 良かったわね、ミレイヌ」

 私は全員に向けてただ微笑む。
 私にもう声をかける人間は誰もいなかった。
 だからその場で優雅に最後の礼をする。

「では皆さんごきげんよう。もう二度と会わないことを祈りまして」

 私は振り返ることなく、その場をあとにする。
 そして部屋で荷物をまとめると、家を出て行った。
 
「んー。やっぱりエドガー様にでも頼んでお仕事紹介してもらおうかな。ああでも、他の国を好きに回るのもいいかもしれない」

 妹が欲しがった婚約者も、妹が欲しがった伯爵令嬢の立場も、今の私には必要ない。

 私はようやく、自分の人生を生きられるのだから――