欲しがる妹に婚約者をあげたら、なぜかキレられました。これって私が悪いのでしょうか?

「ねぇ、アデライトお姉さま、あたしにルシアン様をちょうだい?」

 妹のミレイヌは私の部屋に入ってきたかと思うと、目を合わせるより前にそう言い放った。

 ルシアンは、幼い頃に親が決めた私の婚約者だ。
 私たちは同じ伯爵家同士。
 家と家との繋がりで私たちは婚約し、あと一年もすれば結婚という流れになっている。

 その事実は、ミレイヌだって知らないはずはない。
 それなのに「ちょうだい」とは……。

 だいたい人間をそうも簡単に譲渡するなど、あり得ない話だとなぜ思わないのかしら。
 今までのように簡単にあげられるモノとはわけが違うのよ。

 私が呆れ果てていても、ミレイヌはまったく気に留める様子もない。 
 むしろ形の良い真っ赤な唇の口角はしっかりと上がり、同色のその瞳がこちらを見下ろすように見ている。

 机の上で書類を片づけていた私はその手を止めて、ミレイヌを見た。