俺にだけ弱さを見せろ~無口な生徒会長の過保護な溺愛命令~

学園を出て、夕闇が静かに降りてくる帰り道。

街灯がポツポツと灯り始める住宅街を、私は一人、ゆっくりとした足取りで歩いていた。

秋の冷たい風が頬をかすめていくけれど、胸の奥だけはずっと温かいままだ。

(……九条くん、すごかったなぁ)

歩きながら、私は今日生徒会室で見た九条くんの姿を思い出していた。

学園の頂点に立つ生徒会長として、膨大な仕事を冷徹なまでの完璧さでこなしていた姿。

⋯そして

『誰も気づかない細部に気づき、他人の負担を自然に減らす。……それがどれほど希少な能力か、お前は無自覚すぎる』

『俺は、お前のその仕事を高く買っている』

彼の低い声が、頭の中で何度も何度もリフレインする。

鞄の持ち手を静かに握り直しながら、私は小さく息を吐き出した。

すごくすごく、嬉しかった。

でも…

胸の奥に湧き上がるのは純粋な嬉しさだけじゃない。

どれだけ頑張っても97点止まりで、本当の才能なんて何一つないもん。

いつかボロが出て、「万能」なんて嘘だと知られたら、九条くんはきっと私に失望するに決まっている。

九条くんの言葉に救われそうになる自分と、自分の本当の姿を知られるのが怖い自分。

その二つの間で、胸の奥が不規則に揺れていた。

冷たい秋風が吹き抜ける帰り道。

私は一人、家路を急いだのだった。