『いつからか、君が特別だった』

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講義終了を告げるチャイムが鳴ると、静かだった大教室が一気に騒がしくなった。

「湊〜! 今日のサークルって何時からだっけ?」

「湊、次の講義の教室一緒に移動しよーぜ」

「ねえ湊くん、この後空きコマある?」

ノートを片付けようとした瞬間、
俺の周りには男子も女子も関係なく
すぐに人が集まってくる。

隣を見ると、
蓮は蓮で「蓮〜、今週末飲み行かない?」と
女子たちに囲まれて適当にあしらっていた。

俺は集まってきたやつらに苦笑いしながら
「後でLINEする!」「次の講義、教室一緒に行こうか」といつものように対応する。

普段ならそのまま友達に囲まれたまま移動するところだ。


だけど――

俺の視線は、無意識に斜め後ろの席を探していた。


「あ、莉央、ノート忘れてない?」

「ほんとだ! 紗季ありがと!」

周囲の人だかりの隙間から、莉央ちゃんと楽しそうに話しながら鞄をまとめる紗季ちゃんの姿が見える。

(……あ、行っちゃうな)

周りに声をかけられて身動きが取れない中、
俺は人だかりの隙間から紗季ちゃんの方を
じっと見つめた。

すると、
視線に気づいた紗季ちゃんが、
口元をほころばせ、俺の方を振り返る。

俺はみんなに見つからないよう、
そっと小さく手を振って、口パクで伝えた。

『またあとで』

紗季ちゃんは一瞬パッと顔を明るくすると、
嬉しそうにこくっと頷いて、
小さく手を振り返してくれた。

それだけのやり取りなのに、胸の奥がじんわりと温かくなる。


そういえば――

前はこうじゃなかった。

講義室で彼女を見かけても『あ、あの子今日もいるな』と思うくらいで、特に話すことも発展することもなかった

「ちょっと湊、どこ見てんの〜?」

「あ、ごめんごめん。次、3号館だっけ?」

友達に肩を叩かれて我に返る。

サークル活動を通して
いつの間にかこんな風に合図を交わすくらい仲良くなっていた。

でも、それを特別なことだとは思っていなかった。

ただ、仲良くなれたのが嬉しいから。

放課後のサークルが楽しみで仕方ないから。

それだけだと思っていた。