『いつからか、君が特別だった』


湊side


一限目。

俺はいつもより少し早めに講義室へ着いた。

「お、湊。今日早いじゃん」

「蓮もじゃん」

「俺はいつもこんなもん」

そんなくだらない話をしながら、
二人で講義室の空いている席に座る。

教授が来て講義が始まっても、
俺はなんとなく落ち着かなかった。

ノートを開きながら、
ふと教室の後ろや入口の方を見回してしまう。

……まだ来てないか。

そう思ったところで、自分でも少し不思議に思う。

誰を探してるんだ、俺。

「どうした?」

隣で蓮が囁いてくる。

「いや、別に」

そう答えてノートに目を戻した直後。

カチャリと静かに後方のドアが開き、聞き慣れた足音が聞こえた。

振り返ると、莉央ちゃんと一緒に紗季ちゃんが入ってきた。

空いている席を探して、ちょうど俺たちの斜め後ろの席に腰を下ろす。

紗季ちゃんと目が合うと、
彼女は「あ」という顔をして、
小さく手を振りながら柔らかく笑った。

(……あ)

それだけで、

なんだか急にテンションが上がってしまう。

教授が黒板に文字を書いている隙を見て、

俺は後ろを振り返り、声をひそめて話しかけた。

「紗季ちゃん、今日のサークル、何撮るか決めた?」

「ううん、まだ決めてないの」

紗季ちゃんもノートで口元を隠しながら、コソコソと楽しそうに微笑む。

「じゃあ、一緒にまた探そっか?」

「うん! 楽しみだね」

講義中だというのに、放課後のサークルの時間が待ち遠しくて仕方がない。

そんなやり取りをしていると、隣の莉央ちゃんが驚いたように囁いてきた。

「え、二人でもう今日の約束? 私も一緒に行くー」

「莉央ちゃんは蓮と行けば?」

俺がそう言うと、
莉央ちゃんが「え?」と目を見開く。

「ほら、蓮もヒマそうだし」

「俺を巻き込むなよ」

蓮が呆れたように言いつつも、
口元を緩めて莉央ちゃんに視線を向けている。