『いつからか、君が特別だった』


***

それから、何度かサークルに参加した。

最初の頃は、莉央の近くにいることが多かった。

写真を撮るときも、休憩するときも。

でも、いつからだっただろう。

「紗季ちゃん、こっち行ってみない?」

「うん」

湊くんに声をかけられることが増えた。

最初は、莉央も一緒だった。

けれど、写真を撮っているうちに自然と二人で歩いていることも多くなった。

「紗季ちゃん、これ撮らない?」

「……あ、かわいい」

道の端に咲いていた小さな花。

「こういうの好きだよね」

「ふふ、うん。よく覚えてたね」

「だって、この前も撮ってたから」

「そうだった?」

「うん」

湊くんは、そんな細かいことまで覚えている。

それが嬉しくて、私は小さく笑った。

「じゃあ、湊くんも撮る?」

「もちろん」

「同じの?」

「うん。紗季ちゃんが撮るなら、俺も負けないように撮る!」

「ふふ……」

なんだかおかしくて、二人で笑った。

別の日には、写真とは関係ない話もした。

授業のこと。

好きな食べ物のこと。

最近見た映画のこと。

私は自分から話題を出すのが得意なほうではない。

それでも、湊くんといると不思議と会話が続いた。

沈黙になっても、気まずくない。

何かを話さなくても、無理をしなくていい。

そういう時間が、私は心地よかった。

ある日。

サークルが終わったあと、莉央と二人で帰っていた。

「紗季、最近湊くんとよく話してるね」

「……そうかな?」

「うん」

莉央が笑う。

「前より一緒にいること多くない?」

「そうかも……」

言われてみれば、そうだった。

サークルに行けば、湊くんと話す。

写真を撮っていると、自然と近くにいる。

それが、いつの間にか当たり前になっていた。

「湊くん、話しやすいからかな」

「そうなんだ?」

「うん」

少し考えてから、続ける。

「話してると楽しいし……」

「ふーん」

莉央が、なんだか嬉しそうに笑った。

「なあに?」

「ううん。紗季が楽しそうだから」

「……そう?」

「うん」

そう言われて、私は少しだけ考えた。

たしかに。

湊くんと話しているときは、自然と笑っている気がする。

次のサークルの日。

また話せるかな。

そんなことを考える自分に気づいて、私は小さく首を傾げた。




どうして楽しみなんだろう。

でも、その理由はまだ分からなかった。