春、ゆらり舞い散る花びらに最後の餞別を

そうだ、彼女の名前は清水さんじゃない。紗希、だ。忘れられない名前。何で忘れていたのか不思議なほどだ。


「紗希いいぃっ」


声の限り叫ぶ。紗希に届いたらいいな。


金縛りに遭っていた足が動く。何も考えない、ただ紗希に向かって走る。


前に手を伸ばす。届いたけれどここからじゃ二人とも助からない。


なら最善案はこれだ。


―――ドンッ


紗希を突き飛ばす。痛いよねごめんね。


紗希の顔がサァーっと青白くなる。顔面蒼白とはまさにこのことだ。


「紗希…大好き」