「莉愛ー! 待って、ストーリー撮る!」
「またー?」
学校の昼休み。
「莉愛も入って!」
「はやくー!」
スマホの角度を調整しながら、美月と結衣が楽しそうに私を呼ぶ。
「はいはい」
私は二人のところへ行き、向けられたスマホに適当にピースをして笑った。
「莉愛、適当すぎ!」
美月が不満そうに眉をしかめる。
「ちゃんとやってるじゃん」
「莉愛は適当に撮っても盛れるからいいよね〜」
結衣はそう言いながら、後ろから私に抱きついてきた。
「っ……そんなことないって」
「それ、逆に傷つくから!」
「なんでよ!」
顔を見合わせ、三人で笑う。
私は、一ノ瀬莉愛。
ごく普通の高校に通う、高校二年生。
美月と結衣とは一年生の時に仲良くなって、それからずっと三人でいる。
放課後に寄り道したり、くだらない動画を撮ったり、テスト前になって慌てて勉強したり。
そんな、どこにでもある高校生活を一緒に楽しんでいる。
いつもの昼休み。
いつもの会話。
私は、こういう時間が好きだった。
「ねぇ、莉愛」
「ん?」
「今日も水瀬くんと帰るの?」
「え?」
突然出てきた名前に、思わず瞬きをする。
水瀬蒼。
小さな頃から一緒にいる、私の幼馴染。
小学校も、中学校も。
そして高校まで同じ。
家も近いから、朝はほとんど毎日一緒に学校へ来ている。
親同士も仲がいい。
「帰るかどうかは知らない」
「またまた〜」
「何、その言い方」
「だって毎朝一緒に登校してるじゃん」
二人は私を見ながら、少女漫画のヒロインみたいに目を輝かせている。
二人が期待するようなことなんて、何もないのに。
「家近いんだから仕方ないでしょ」
「それを世間では幼馴染ラブっていうんだよ」
「言わないから」
「もう付き合っちゃえばいいのに」
「だから、そんなんじゃないって」
何度目だろう、このやり取り。
蒼は昔から、やたら女子に人気がある。
背も高いし、顔も整っている。
運動もできるし、そこそこ頭もいい。
本人はあんまり自覚してなさそうだけど。
「莉愛は水瀬くんのこと、本当に何とも思ってないの?」
「何ともって?」
「男として」
「…………」
一瞬、言葉に詰まった。
蒼を男として意識する、ということが、私にはいまいちよく分からない。
それに蒼だって、私のことはただの幼馴染としか思っていないだろうし。
「ほら!」
「違うって!向こうもそうだと思うし」
「今、間があった!」
「なかった!」
二人が楽しそうに笑う。
正直、こういう話は少し苦手だ。
恋愛に興味がないわけじゃない。
ただ――「好き」っていう感情が、私にはまだよく分からない。
「でも、ぐずぐずしてると他の子に取られちゃうかもよ〜」
二人は楽しそうに恋バナを続けている。
まあ、高校生女子が三人集まれば、こういう話になるのも珍しくない。
「もう、この話終わり!」
私は逃げるように、自分の席へ戻った。
「…………」
蒼を、男として。
考えたことがないと言えば、嘘になる。
昔は、本当にただの幼馴染だった。
一緒に虫を捕まえて。
くだらないことで喧嘩して。
お互いの家に勝手に上がって。
そんな関係。
でも、高校生になって。
蒼が知らない女の子に呼び止められているところを見たり、「水瀬くんってかっこいいよね」なんて話を聞いたりすると。
ほんの少しだけ、変な感じがする。
胸の奥が、もやっとするというか。
だからといって、付き合いたいのかと聞かれたら分からない。
好きなのかどうかも、分からない。
幼馴染すぎるのだ。
みんなが知っている蒼のいいところも。
みんなが知らない、あいつの格好悪いところも。
私はたくさん知っている。
「…………ないな」
考えれば考えるほど違う気がして、私は一人、小さく呟いた。
「またー?」
学校の昼休み。
「莉愛も入って!」
「はやくー!」
スマホの角度を調整しながら、美月と結衣が楽しそうに私を呼ぶ。
「はいはい」
私は二人のところへ行き、向けられたスマホに適当にピースをして笑った。
「莉愛、適当すぎ!」
美月が不満そうに眉をしかめる。
「ちゃんとやってるじゃん」
「莉愛は適当に撮っても盛れるからいいよね〜」
結衣はそう言いながら、後ろから私に抱きついてきた。
「っ……そんなことないって」
「それ、逆に傷つくから!」
「なんでよ!」
顔を見合わせ、三人で笑う。
私は、一ノ瀬莉愛。
ごく普通の高校に通う、高校二年生。
美月と結衣とは一年生の時に仲良くなって、それからずっと三人でいる。
放課後に寄り道したり、くだらない動画を撮ったり、テスト前になって慌てて勉強したり。
そんな、どこにでもある高校生活を一緒に楽しんでいる。
いつもの昼休み。
いつもの会話。
私は、こういう時間が好きだった。
「ねぇ、莉愛」
「ん?」
「今日も水瀬くんと帰るの?」
「え?」
突然出てきた名前に、思わず瞬きをする。
水瀬蒼。
小さな頃から一緒にいる、私の幼馴染。
小学校も、中学校も。
そして高校まで同じ。
家も近いから、朝はほとんど毎日一緒に学校へ来ている。
親同士も仲がいい。
「帰るかどうかは知らない」
「またまた〜」
「何、その言い方」
「だって毎朝一緒に登校してるじゃん」
二人は私を見ながら、少女漫画のヒロインみたいに目を輝かせている。
二人が期待するようなことなんて、何もないのに。
「家近いんだから仕方ないでしょ」
「それを世間では幼馴染ラブっていうんだよ」
「言わないから」
「もう付き合っちゃえばいいのに」
「だから、そんなんじゃないって」
何度目だろう、このやり取り。
蒼は昔から、やたら女子に人気がある。
背も高いし、顔も整っている。
運動もできるし、そこそこ頭もいい。
本人はあんまり自覚してなさそうだけど。
「莉愛は水瀬くんのこと、本当に何とも思ってないの?」
「何ともって?」
「男として」
「…………」
一瞬、言葉に詰まった。
蒼を男として意識する、ということが、私にはいまいちよく分からない。
それに蒼だって、私のことはただの幼馴染としか思っていないだろうし。
「ほら!」
「違うって!向こうもそうだと思うし」
「今、間があった!」
「なかった!」
二人が楽しそうに笑う。
正直、こういう話は少し苦手だ。
恋愛に興味がないわけじゃない。
ただ――「好き」っていう感情が、私にはまだよく分からない。
「でも、ぐずぐずしてると他の子に取られちゃうかもよ〜」
二人は楽しそうに恋バナを続けている。
まあ、高校生女子が三人集まれば、こういう話になるのも珍しくない。
「もう、この話終わり!」
私は逃げるように、自分の席へ戻った。
「…………」
蒼を、男として。
考えたことがないと言えば、嘘になる。
昔は、本当にただの幼馴染だった。
一緒に虫を捕まえて。
くだらないことで喧嘩して。
お互いの家に勝手に上がって。
そんな関係。
でも、高校生になって。
蒼が知らない女の子に呼び止められているところを見たり、「水瀬くんってかっこいいよね」なんて話を聞いたりすると。
ほんの少しだけ、変な感じがする。
胸の奥が、もやっとするというか。
だからといって、付き合いたいのかと聞かれたら分からない。
好きなのかどうかも、分からない。
幼馴染すぎるのだ。
みんなが知っている蒼のいいところも。
みんなが知らない、あいつの格好悪いところも。
私はたくさん知っている。
「…………ないな」
考えれば考えるほど違う気がして、私は一人、小さく呟いた。



