あの日、青い瞳の君に恋をした 前編:君と生きた日々

八月六日。

この日が何の日か、知っていますか。

広島に、原子爆弾が落とされた日。

きっと、

「知っている」

と答える人は多いでしょう。

私もそうでした。

学校で習った。

教科書で写真を見た。

たくさんの人が亡くなったことも知っていた。

八月九日には、長崎。

八月十五日に、日本は終戦を迎えた。

知っていた。

全部、知っているつもりだった。

だからもし、過去の私に、

「戦争って怖い?」

と聞いたら、きっと迷わず答えていた。

「怖いに決まってるじゃん」

原爆なんて、もっと怖い。

そんなの、考えるまでもないと思っていた。

だけど。

――本当に?

あなたは、戦争を知っていますか。

朝、「行ってきます」と家を出た人が、もう二度と帰ってこないこと。

昨日まであった家が、次の日にはなくなっていること。

「喉が渇いた」と泣いている人を前にして、水を渡すことさえできないこと。

「助けて」と言われても、どうすることもできないこと。

戦争が終わったと聞いても、その日から元の暮らしに戻れるわけではないこと。

それでも人は、お腹が空く。

誰かを好きになる。

くだらないことで笑う。

明日を生きたいと願う。

私は、そんなことを何も知らなかった。

知っていたのは、

「一九四五年八月六日」

という日付と、教科書に書かれた、ほんの数行だけ。

あの日までは。

もし、あの夏に戻らなかったら。

私はきっと今でも、戦争を知っているつもりでいた。

これは、戦争を知らない私が、一九四五年八月六日の広島で、一人の男の子に出会った不思議な物語。。

青い瞳をした、とても優しい男の子に。

そして。

教科書には書かれていない、一人一人の「生きたかった」を知るまでの話。