君の手を掴むための遠回り


​初めてのキスを経て、俺の中で
「自分への嫌悪感」は決定的なものになった。

​どれだけ周囲から''サッカー部のエース''と持て囃されても、どれだけ誰かに求められても、俺の心が求める温もりは瑠華以外に存在しない。

その残酷な現実を、嫌というほど思い知らされたからだ。


​「……ごめん。やっぱり、付き合えない」

​「え…? なんで…? 私、何か悪いことした…?」


​付き合い初めてから2ヶ月半。

理由も分からず傷つき、ボロボロと大きな涙をこぼす最初の彼女の背中を見送りながら、俺は誰もいない公園の便所で自分の胸を何度も強く拳で殴りつけた。


​(なにやってんだよ俺は……最低だ……っ!)


​瑠華との大切な約束を踏みにじり、好きでもない女子の好意を利用して寂しさを埋めようとした自分。

その汚さと卑怯さに猛烈な吐き気が込み上げてくる。

────もう二度と、誰も傷つけまい。

誰とも付き合うまい。

​固い拳を壁に叩きつけ、心にそう誓ったはずだった。

けれど、一度覚えてしまった''逃げ道''は、俺を簡単には解放してくれなかった。

​部活を終えて一歩家に帰れば、静まり返った暗い部屋と絶望的な静寂が待っている。

ベッドに横たわり、天井を見つめていると、瑠華がいない現実に押し潰されそうになり、息がうまくできなくなるのだ。

一人になる恐怖に耐えきれなくなった俺は、また差し出される新しい好意に手を伸ばしてしまう。