君の手を掴むための遠回り


​瑠華がいなくなってからの毎日は、モノクロの映画を観ているかのように色を失っていた。

​中学に入り、制服のサイズが大きくなり、周囲の環境が変わっても、胸の奥に開いたぽっかりとした穴が塞がることはなかった。

放課後、部活を終えて家に帰れば静まり返った暗いリビング。

隣の家の二階を見上げても、あの暖かいオレンジ色の明かりは点かない。


​(寂しい。一人になりたくない────)


​夜、部屋で一人になると、あの瑠華が去った日の絶望感が津波のように押し寄せてくる。

暗闇の中でどれだけ手を伸ばしても、そこには誰もいない。

一人でいることの恐怖に、毎夜押し潰されそうになっていた。



────だが、そんな俺の内面の荒んだ暗闇とは裏腹に、周囲からの評価は全く別の方向へと一人歩きしていた。

​小学校の頃から続けていたサッカー部に入部すると、俺はすぐに頭角を現した。

背が伸び、ポジション的にも目立つフォワードを務めていたこともあって、試合で点を決めるたびに他校や女子生徒からの視線を集めるようになった。


​「ねえ、サッカー部の神楽くんってめちゃくちゃカッコよくない?」

「背も高いし、プレーしてる時すごくイケメンだよね」

「誰かと付き合ったりしてないのかな……?」


​教室の隅や部活帰りの廊下で、女子たちがひそひそと囁き合う声。